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なぜ夫は、交番の前で息絶えたのか。「AEDを使ってほしかった」妻の思い

7/24(水) 17:08配信

BuzzFeed Japan

あのとき、AEDを使ってもらえれば。6年前のある冬の日。乗っていたタクシーの中で意識を失い、そのまま交番に運ばれた男性がいる。男性はその後、死亡した。死因は心疾患だった。交番の中には、AED(自動体外式除細動器)が設置されていたが、誰かがそれを使用することはなかった。【BuzzFeed Japan/籏智 広太】

【イラスト】医師が書いた「心臓マッサージのやり方」

「なぜ夫はと思うと、いまも本当に悔しいです」

そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、東京都に暮らす山口淳子さんだ。

夫・修さんが亡くなったのは、2013年2月4日のこと。いまでもその日の朝のことは、しっかりと覚えている。

名古屋に出張する予定だった、修さん。「携帯、どこだっけ」「ここにあるじゃないの」という言葉を淳子さんと交わし、いつも通り家を出た。7時45分のことだ。

「まさか、あれが最後になるなんて。大学時代から32年間一緒で、けんかは1、2度だけ。声をあらげることもない、おだやかで優しい人でした」

家からたった、数百メートル先で

のちにタクシーの運転手から聞いた話によると、修さんは家を出た15分後には隣駅でタクシーを拾っている。汗をぬぐいながら家の方向に向かうように頼んだのち、意識を失ったという。

「きっと駅か電車で体調が悪くなったんじゃないでしょうか。ホームで倒れて迷惑をかけるくらいなら、とタクシーを拾って、家に帰ろうとしていたのだと思います」

8時10分ごろ。話しかけても返事のない修さんの異変に気がついた運転手は、助けを求めようと、そのまま最寄りの交番へと向かった。

運ばれたのは、家族で暮らすマンションから、たった数百メートル先だった。中にいた警察官は救急車を呼んだものの、応急処置を取ることはしなかった、という。

救急車は、十数分後に到着。運ばれた病院で、修さんの死亡が確認された。死因は、虚血性心疾患だった。

なぜAEDは、使われなかったのか

淳子さんが交番にAEDがあると知ったのは、葬儀などが一通り終わってからのことだった。

「いつも駅にいくときの通り道なんですが、亡くなってからしばらくは思い出すのもいやで、通ることができなかったんです。それでも通らないといけなかったときに、ふと気がついて……」

AEDは、倒れている人の胸に装着すると、電気ショックをした方がいいか自動的に判断し、電気ショックの応急処置ができる器械だ。電源を入れると音声で指示が流れるので、特に医療の知識がなくても扱うことができる。

数メートル先の交番にあったAEDで、数歩先のAEDで、応急措置をしてもらえなかったのか。もしかしたら、命を失わずに済んだかもしれないのに。

そんな思いが、心の中に広がった。山口さんは、管轄の警視庁愛宕署に説明を求めた。

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最終更新:7/24(水) 17:09
BuzzFeed Japan

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