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誰がミルク業界を潰したのか? 米国で激化する「ミルク戦争」の行方

7/28(日) 7:00配信

ITmedia ビジネスオンライン

 子どもの成長に欠かせない、栄養価の高い飲み物として知られている牛乳。育ち盛りの子どもがいる家庭では、冷蔵庫に必ず入っているアイテムだ。米国の家庭では、朝食のシリアルと一緒に消費されるため、スーパーでガロン(3.7リットル)入りの牛乳が定番として売られている。

日本でも波及するのか? 牛乳離れ

 そんな大容量の牛乳が定番サイズになっている米国は、牛乳の生産量で世界一を誇っている。(生産量世界一はインドという説もあるが、牛ではなくバッファローのミルクが大半を占めているため、厳密にいうと順位が異なる)

 となれば、さぞかし牛乳の消費量もとんでもないと思うだろう。しかし、実際には過去40年ほどの間に、米国人の牛乳離れが加速している。

 1975年には国民1人当たりの牛乳の消費量が247ポンド(約112キログラム)だったのに対し、2017年には149ポンド(約68キログラム)まで減少。なんと、牛乳の消費量が40%も落ち込んでいる。

 その結果、牛乳の販売価格は下落しているのに、生産コストは上昇しているため、酪農業界は瀕死の状態に陥っているという。米国農務省によると、18年には2700軒以上もの酪農場が閉鎖に追い込まれている。

 米最大の乳製品会社Dean Foods(ディーン・フーズ)ですら、倒産してしまうのではないかとささやかれるほどになっている。では、いったい何がミルク業界をこのような状態に陥れたのだろうか。

牛乳の消費が落ち込んでいる理由

 米国上院議員のRon Johnsonによると、オバマ政権時代に行った「The Healthy, Hunger-free Kids Act(2010)」が影響しているという。

 この法案は、学校給食の栄養基準を変更するもので、学生の食生活をより健康的にする目的で執行された。それまで、学校給食の牛乳は脂肪分の異なる4種類が提供されていた。全乳(成分無調整)、脂肪分2%、脂肪分1%と無脂肪乳だが、この法案により脂肪分が高いとされる全乳や脂肪分2%の牛乳が禁止となった。

 つまり、残された無脂肪乳や脂肪分1%の牛乳だけが、学校給食で提供されることになったのだ。カロリーだけを考えたら、無脂肪乳や脂肪分1%の牛乳は理想的かもしれないが、薄くて水っぽく感じる味が原因で牛乳そのもが嫌いになる生徒が増えてしまった。

 その結果、すでに減少傾向にあった牛乳の消費量が、さらに加速してしまったのだ。単純に、味の薄い牛乳をわざわざ飲まなくても、それだったら水で十分ではないか、と思ってしまうのが普通だからだ。

 牛乳の消費が落ち込んでいる理由は、それだけではない。乳牛から搾乳される、いわゆる「牛乳」とは異なる、代替えミルクが注目されバリエーションが増えていることもある。代替えミルクとは、植物性ミルクのことで、昔からあってよく知られているのは豆乳だ。しかし最近では、アーモンドミルク、オートミルク、ライスミルク、ピーナッツミルクなどさまざまな種類が売られている。

 植物性ミルクは、生産技術の向上によって味や品質が格段によくなり、さらに多くの消費者をひきつけている。そして、米国では牛乳の売り上げが減少しているのとは対照的に、植物性ミルクの売り上げは増加傾向にある。

 The Good Food Instituteによると、米国での植物性ミルクの売り上げは、19年4月時点で前年比6%増の約19億ドルとなった。とはいえ、ミルク市場全体に占める植物性ミルクの売り上げは、13%ほどだ。それでも、急成長しているため、酪農業界にとって大きな脅威になりつつある。

 興味深いのは、植物性ミルクの販売価格は牛乳より高めなのに、購入する人が増えていることだ。現在、数ある植物性ミルクの中でも、一番売れているのはアーモンドミルク。その次に続くのは豆乳で、どちらも牛乳の販売価格の約2倍で売られている。

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最終更新:7/28(日) 7:00
ITmedia ビジネスオンライン

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