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一人暮らしを始めたものの安心して働けない 障害福祉制度の壁を崩す

8/1(木) 11:10配信

BuzzFeed Japan

さいたま市は独自の就労支援事業を創設

途方にくれた猪瀬さんらは、自立支援をしてくれた地元のNPO法人くれぱすに相談した。くれぱすは障害福祉に熱心な市議を紹介してくれた。

この市議は「それはおかしいですよね」とすぐに市議会で取り上げてくれ、障害支援課長との面談や要望書の提出も実現した。

さいたま市はまず国の制度を動かそうと動いたが、「就労中の障害者の支援については、就労で恩恵を受ける企業自身が支援を行うべき」などとして結論が先送りされたのは別の記事で伝えた通りだ。

2018年2月に広告デザイン会社でインターンとして働き始めた矢口さんも訴えに加わり、その年の3月の議会で、全国に先駆けてさいたま市独自の制度として、仕事中の介助派遣費用を全額公費負担する就労支援事業を2019年度から創設した。

「さいたま市は市内に住む重度障害者75人に働く意思はあるか、この制度を使いたいかアンケートを取ったのですが、働いているのは僕ら2人だけでした。でもこの制度が始めることを知って、もう一人働くことになったそうです。制度が就労意欲を生み出したのかもしれません」と矢口さんは言う。

誰もが安心して生きられるように国の制度に

そして今、二人はそれぞれ介助派遣を受けながら毎日、働いている。

矢口さんは「僕はマウスピースが外れたら自分で咥え直すことができないから命に関わりますし、たん吸引などの医療的ケアもしてもらっています。トイレや水分補給はもちろん、体の姿勢を整えたり、マウスを持つ手の位置を調整してもらったり、働く上で欠かせない介助です」と話す。

猪瀬さんの方は介助派遣を受ける事業所の準備が整い次第利用を開始する予定だ。制度が出来たことで安心が得られたという。

「これから病状が進行しても、身の回りの介助がしてもらえるならば、仕事を諦めなくて済みます。これまで人に与えられてばかりの生活でしたが、仕事をして人の役にたてるのが嬉しいし、社会参加することで自分の視野も大きく広がった」

「もちろん働けないほどの重度の障害者も生きるための介助は必ず必要ですが、パソコンや技術の進歩で働けて、働きたいという意思があるならば、自分の能力を最大限発揮したい。さいたま市だけでなく、国の制度として広がって、全国どこでも勤務中に介助派遣が利用できるようにしてほしいです」

重度障害がある二人が、国会に進出したことは二人の希望となっている。

「当事者でないと気づかないことを当事者の声として伝わる効果を期待しています。幼い頃から健常者と分離されないインクルーシブ教育や、自立支援も含めて共生社会が実現することを願っています」

(終わり)

岩永直子

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最終更新:8/1(木) 11:10
BuzzFeed Japan

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