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日本の実状が裏付けに? 「MMT」はなぜ論争を巻き起こすか

8/1(木) 17:10配信

THE PAGE

 アメリカから沸き起こった新しい経済理論が日本をはじめ世界で論争を呼んでいます。「どれだけ借金しても財政は破綻しない」という一見常識外れのようにもみえるこの理論は、なぜ荒唐無稽だとして切って捨てられないのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストが論考します。

どれだけ借金しても破綻しない?

 「MMT」(モダン・マネタリー・セオリー=現代貨幣理論)という経済理論が話題です。米民主党左派のアンドレア・オカシオ・コルテス下院議員が自身の政策案の財源捻出の説明にあたって、このMMTを論拠に置き「財政赤字など気にせず、国債を発行すれば問題ない」との旨の発言をしたことで一躍話題となり、それが日本に飛来してきた形です。日本の国会でも取り上げられました。以下、本稿では現在のMMTをめぐる議論を紹介します。ただし、MMTを推奨・否定する意図はないことを付記しておきます。

 専門家が眉をひそめることを承知の上で、MMTを端的に表現するならば「政府がどんなに借金を膨らましても、中央銀行(日銀)がおカネを刷ってそれを返済原資に充てれば、財政は破綻しない。ならば、財政赤字や債務残高など気にせず、目の前の景気対策に集中するべき」といったところです(もちろん借金に限度はありますが、本稿では簡略化を優先します)。

 この論で最も強く違和感を覚えるのは「政府がどんなに借金を膨らましても財政は破綻しない」という部分でしょう。たとえば日本の政府債務残高は約1200兆円、GDP(国内総生産)比240%と先進国最大ですから、財政の持続可能性に対する不安が広く共有されています。政府発行の国債が償還しない、年金が減額される、という不安を抱いているという人も多いと思います。だからこそ、財政健全化などを目的に2019年10月に消費増税が予定されているのです。

自国通貨建て国債はデフォルトしない?

 しかしながら、意外なことにも、日本の財務省のHPには「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」との記載があります。自国通貨建て国債とは、政府が円で発行し円で償還する国債のこと。デフォルトとは債務不履行、すなわち日本政府が借金を返せなくなることを指します。

 この声明は、かつて日本国債の格付けが引き下げされた際、財務省が民間格付け会社に抗議の意を込めて書いたものです。財務省の主張を意訳すると「いざとなったら、おカネを刷ってでも、借金を返す用意がある。それなのに、なぜ格下げするのか?」といったところです。

 つまり「政府がどんなに借金をしても、日銀がおカネを刷ってそれを返済原資に充てれば、財政は破綻しない」という主張は極端な発想に思える一方、円という通貨を有する日本政府は、いくらでもおカネを発行することができるのは事実なので、この点は案外正しいと言えます。したがって、日本政府が破綻するのは、自らの意思でおカネを刷らないことを決定し、借金を返済しないケースに限られます。

 ただ、いくら財務省のHPに「デフォルトは考えられない」と書いてあっても無尽蔵におカネを刷れば「お札が紙切れになって物価が高騰する」、「金利が跳ね上がりギリシャやアルゼンチンの二の舞になる」、「為替市場で円が暴落し、輸入品が買えなくなる」と考えるのが常識でしょう。「そんな魔法はあるはずない」と考えるのが自然です。

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最終更新:8/1(木) 17:27
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