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伊藤詩織さん「自分が潰れてしまったら…」と耐えた日々 「被害を話せるような社会」を目指すために

8/5(月) 16:34配信

弁護士ドットコム

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者のジャーナリスト・山口敬之さんから性暴力被害にあったとして慰謝料など1100万円の損害賠償を求めた訴訟。7月8日に東京地裁に開かれた口頭弁論には、わずか30席の傍聴券を求めて168人が並んだ。

8月1日に東京都内で裁判報告集会(主催・伊藤詩織さんの民事裁判を支える会Open the Black Box)が開かれ、伊藤さんと代理人弁護士らが登壇した。

口頭弁論には原告、被告それぞれが出廷。伊藤さんはあの日から初めて、山口さんと顔を合わせた。伊藤さんは「やめて、痛いと伝えてもやめてくれなかった」と訴え、山口さんは「同意はあった」と話し、双方の主張は対立した。

伊藤さんは「自分の目で彼の表情や証言を耳にすることは、とても貴重なことだった」と振り返り、「結果はどうなるかわかりませんが、今後も、わからない、話せないとされていたことに、一緒に向き合っていただけたらと思います」とあいさつした。

●伊藤さん「私の選択で、ここで立っています」

「何が足りなくて起訴できなかったのか。今の法律や社会的サポートには何が足りないのか。それを考えるきっかけになって欲しいという思いだった」。伊藤さんは2017年5月に会見を開いた経緯について、こう振り返る。

「私たちにできることは、何が必要なのかということをまず考えて、個人個人で自分は何ができるのかと考えることだと思う。そのきっかけとして、このケースに向き合っていただいていることに感謝します」

この日の会場には多くの支援者が詰めかけ、壁際に立ち見の人があふれた。伊藤さんは「この場にいらしただけですごく大きなサポートです」と繰り返し感謝を述べた。

参加者から「『勇気があるね』と言われることについて、どう思うか」と尋ねられると、伊藤さんは「よく『詩織さんが強いからできたんですよ』とか言われるんですけど、もう、全然強い部分なんて、本当になくて。一つ一つ壁にぶつかりながら進めたのも、代理人弁護士や友人の支えがあったから」と言う。

「『やっぱりこういう話をしたら咎められるから、話さなくていいよね』と言われたくなかったので、前に出る時は、背筋をピンとして『生きてます』っていうアピールをしてきました」

また、「話せるような社会にしたいと思ったのに、自分が潰れてしまったら、逆の例になってしまう。起き上がれなくなったり、サポートが必要になったりしましたね。それでも私の選択で、ここで立っています」と話すと、会場からは拍手が沸き起こった。

●匿名による告発の示す限界

伊藤さんの代理人の一人である角田由紀子弁護士は、伊藤さんの告発について「名前と顔を出して告発したことの意義をもう一度確認する必要がある」と話す。

「被害者のAさんではなく、名前と顔がある人間として登場したことが世の中に与える影響は大きい。リアルの人間が持つ圧倒的な説得力。沈黙では事実が明らかにならない。これは否定でも非難でもないが、匿名による告発の示す限界を考えてみていいと思う」

実名で性暴力を告白することは、「勇気がいる」と言われ、告発した人に対しては「勇気」という言葉が用いられる。これに対し、角田弁護士は「勇気がいると言うことは、なんなんだろうか」と問いかける。角田弁護士も以前登壇した院内集会で「詩織さんの勇気にどう答えるか」という表題の講演があり、この表現について考えたという。

「強盗の被害者は、強盗にあったと告発する時、『勇気』と言わない。なぜ性暴力だと言うのか。それはこの社会が、性暴力被害者をどのように扱って来たのかということ。それは何故なのか。実名での告発を困難にしている原因に向き合わないことが、何をもたらしているのか」

名前を出して顔を出すと、バッシングが起こる。「ひるむのはおかしくない。皆でひるんでいたら、バッシングする勢力だけが広がって、いつまでも被害者は隠れていなきゃいけない。何も本当のことを話していけないと結果的に助長してしまう」

角田弁護士が「日本の社会が変わっていく画期的な出来事ではないか」と話すのが、3月に相次いで報道された性犯罪の無罪判決に抗議し、性暴力を許さないと声をあげる「フラワーデモ」だ。7月のフラワーデモに参加した際、法的なアクセスもできず、何十年もそのままだったという被害者の声を聞いて「ショックだった」と振り返る。

「匿名でしか告発できない現実を、どう崩していけるか。こうした現実的な方策を知恵を出して考えていかなければいけない」と話した。

●裁判の詳細は以下の記事にまとめています

(1)伊藤詩織さん裁判詳報 「自分を守ることに必死だった」あの日を振り返る

(2)伊藤詩織さんに山口さん代理人「被害後に加害者を気遣う言葉、社会常識ではありえない」

(3)「伊藤さんから積極的に誘ってきた」山口敬之さん、伊藤詩織さんの主張に反論

(4)元TBS記者の山口さん「なだめるような気持ちで性行為に応じた」伊藤詩織さんの主張に反論

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:8/5(月) 16:46
弁護士ドットコム

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