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【特集】ドイツの若者は慰安婦問題を扱った映画「主戦場」をどう見たか 「歴史を知る」。それは「問い続ける」ということ

8/8(木) 16:32配信

47NEWS

 そんな現状を踏まえると、バックラッシュ(反動)が想定できるにもかかわらず、慰安婦を取り巻く議論を真正面に据えた映画「主戦場」をあえて作った動機は何だったのか? そう問われたデザキ監督は、こんな風に答えた。

 「教育から消し去られているなら、マスメディアが伝えないなら、映画で伝える理由がある。日系アメリカ人である自分は、それができる特別な立場にある。映画制作者としては映画祭などでの評価を大事にしたいのだが、映画としての芸術性や娯楽性を犠牲にしても、左右双方の議論を中心に伝えることにしたのは、学究的・教育的に重要と考えたから」

 ドイツで子育てをしてきた日本人たちは、異口同音にドイツの戦後教育の徹底ぶりを語る。この映画上映会後に開かれたドイツの大学での話し合いは、それを検証する絶好の機会だった。

 「私のギムナジウム(日本の中学・高校に相当)では、合計3回位、それぞれ2カ月間に渡って、戦争においてドイツの犯した過ちを研究する機会がありました。図書館やネットで調べたり、体験者たちを対象にした聞き取りやアンケートをして、それを他の生徒の前で発表するんです」

 「僕は、小学校の最終学年の宗教・道徳の授業でやったのが最初でした。もちろん、その前にも家族やボーイスカウトなどで、ナチスとか、ホロコーストとかについて、読んだり聞いたり話したりする機会がたくさんありました」

 「ドイツでは国営テレビが今でも、繰り返し、ドイツがどのようにして全体主義、軍国主義に向かってしまったのか、第2次世界大戦中にドイツは何をしてしまったのかを厳しく問うドキュメンタリーを作っては放映しています。それを家族で見て話しながら育つから、小学校高学年くらいからは、そういうテーマが出てきても、下地ができているのでしょう」

 日本の大学で6年間「ジェンダー論」を教えていたという女性は、映画「主戦場」を次のように高く評価する。

 「ドイツの中高では、ほとんど全ての教科で、必ずドイツが犯した過ちがテーマになるのです。国語(ドイツ語)でも、宗教や道徳でも、地理や歴史はもちろん、ガス室での大量殺害や人体実験も行われたので、化学や生物の授業でも。そうすることで、それぞれが関連しあっていることがわかるようになり、被害者の目線でとらえることができるようになるのです。これが、戦争についての教育に関する日本とドイツの根本的な違いだと思います。日本の学生に向かって、慰安婦の話をしようとしたのですが、何も習っていないというので、私は驚きました。教育からかき消されている今、この映画が議論を喚起したことは素晴らしい」

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最終更新:8/9(金) 11:22
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