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自衛隊サイバー教育、拠点は「陸自最古」駐屯地 沈黙の訓練で何を?急務の人材育成、採用段階から奪い合い

8/11(日) 7:00配信

withnews

サイバーの専門家を育てようと自衛隊が躍起です。外国では軍隊の行動をまひさせるサイバー攻撃まで起きる中、自衛隊が自らを守る態勢をいかに整えるか。砲弾ではなくタイプの音が静かに響く、そんな訓練の現場を見てきました。(朝日新聞編集委員・藤田直央)

【現地写真】自衛隊サイバー教育の拠点、陸自通信学校 パソコン前に並ぶ隊員、「野外通信システム」も

攻撃解明へクイズ次々

8月上旬、自衛隊サイバー教育の拠点である陸上自衛隊の通信学校を訪ねました。ふだんは授業が行われる広い教場がボードで仕切られ、数人ごと8チームに分かれた「学生」らがパソコンの画面に見入っていました。「曹」という階級の比較的若い隊員たちです。

3カ月半にわたるサイバー教育課程の仕上げとなる「総合実習」です。自衛隊と同様、外から切り離されている通信学校の通信システムを使った仮想空間で、別室の教官らが自衛隊のシステムに起きた異常を伝え、原因となるサイバー攻撃の解明に向け可能性を絞り込んでいくようなクイズを次々と出します。

「我のサイバー攻撃等対処」と呼ばれる分野で、一日半で計23問。各チームがどこまで解いたかがスクリーンに映し出され、回答の速さを競います。ヒントに頼るのもありですが得点は減ります。あるチームがある問題を解くと、それに対応するマスにそのチームの旗が現れます。

「旗取り合戦」ということで、サイバー分野ではこうした競技会をCTF(Capture The Flag)と呼びます。チーム名は隊員たちが決め、「CTF48」なんてのもありました。8チーム中で何位だったか後で陸自に聞くと、「運用に係る事項であり回答できません」とのことでした。

「敵の攻撃パターンを学ぶ」

とはいえ、ネットを使うといえば検索ぐらいの私には、目の前の隊員たちがパソコン越しに何と格闘しているのかよくわかりません。通信学校でサイバー教育の責任者を務める河口誠1等陸佐(53)に説明してもらいました。

「例えば、サーバーの動きが落ちてきたという状況が出ます。そういう時はサイバー攻撃でどういうパターンがあるかを授業で教えているので、一つひとつチェックし、あぁここがおかしいとわかる。そうして次の問題への視野が開け、どういう攻撃かをだんだん絞っていき、最終的な対処を完成するまで段階的に問題を与えていきます」

これが「我の対処」です。総合実習ではその前に「敵の攻撃要領」でも一日半を費やしたそうです。「敵の攻撃要領」とは何でしょう? 河口さんの説明はこうです。

「敵がどういう攻撃をしてくるかがわからないと守れないので、その教育もしてあります。まず敵は相手のサーバー、ネットワークに侵入する前に調査をしてくる。どこの『穴』から入れるのか、その先にあるサーバーのバージョンは何か、バージョンによってはセキュリティー上の脆弱(ぜいじゃく)性が公開されていて、それを補う『パッチ』が立っているかどうか……」

「敵はそうした調査に基づいて侵入し、サーバー内のデータを搾取するといったことをしてきます。学生にはそれぞれの段階を体感させ、対応するスキルを与えています」

ただ、自衛隊のサイバー人材育成は道半ばです。通信学校での教育はもともと、有事に有線や無線による部隊間の通信をどう確保するかが基本で、自衛隊の通信システムをサイバー攻撃からどう守るかといった教育が始まったのは2004年度です。

コンピューター好きで独学で能力を高める隊員もいるそうですが、サイバー空間をめぐる技術とその攻防の進展はすさまじく、「超サイバー戦士」ひとりに任せられるものではありません。

河口さんは指導にあたり、各隊員の能力や得意分野を見極めることを大切にしています。今回の「総合実習」のチーム分けでも、チーム内で役割分担ができるようにしました。実際の任務にあたるサイバー関連部隊でもそうしたことが考慮されるそうです。

ちなみに、河口さんには「CISSP」という国際的に通用するサイバーセキュリティー専門家という肩書もあります。この資格を持つのは米国には約8万人、日本には約2400人、うち自衛隊ではわずかだそうです。「通信学校の教官も日進月歩の技術に追いつくのに必死です。総合実習の問題はセキュリティー企業に作っていただくのが一番効果的です」とのことでした。

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最終更新:8/11(日) 7:00
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