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自衛隊サイバー教育、拠点は「陸自最古」駐屯地 沈黙の訓練で何を?急務の人材育成、採用段階から奪い合い

8/11(日) 7:00配信

withnews

今年から陸海空で教育

ところで、「総合実習」に臨む隊員たちの制服を見ると、ほとんど陸自ですが、わずかに海自や空自の隊員もいます。自衛隊のサイバー教育はこの陸自の通信学校で行われており、学ぶのは陸自通信科の隊員でしたが、人材育成が急務ということで今年度から海自や空自の隊員にも開かれたのです。

昨年末に閣議決定された防衛計画の大綱では、今のサイバー防衛隊を拡充し、陸海空の3自衛隊で一緒に「サイバー防衛部隊」をつくることになりました。河口さんは「サイバー教育課程には海空からまだ少ないので、たくさん入ってもらいたいですね」と話しました。

陸自では、隊員がサイバー教育を受けに通信学校に入る経緯は本人の希望や上官の推薦など様々だそうです。ただ、たまたまサイバー分野に秀でた人たちが集まるだけでは人材の確保が危ぶまれます。サイバーセキュリティーは民間企業にとっても懸案で、採用の段階から奪い合いです。

防衛省には、大学や大学院の理系の学生に対し、自衛隊に入って専攻を生かす条件で在学中に採用試験を経て学費を貸す制度があります。将来の「技術系幹部」への道として、学生への説明会などでサイバー分野のアピールにも力を入れています。

「陸自最古」の駐屯地で

……と陸自の通信学校を舞台に書いてきましたが、この自衛隊サイバー教育の拠点はどこにあるかご存じでしょうか。東京都新宿区の市ケ谷にある防衛省のビル群の中? いえいえ、実は全国にある陸自駐屯地で一番古いという場所にあります。

久里浜駐屯地(神奈川県横須賀市)です。三浦半島の中ほど、海自や米海軍の基地がある横須賀港から少し先へ行ったところです。浦賀水道に注ぐ平作川に面し、橋を渡って正門という変わった陸自駐屯地で、近くに釣り船が並ぶなど漁村の趣もあります。

この地に戦前は旧海軍の通信学校がありました。敗戦で進駐した米軍に接収されますが、1950年に陸自の前身である警察予備隊の駐屯地として返還されます。54年の自衛隊発足で陸自の駐屯地となり、通信学校の役割も旧海軍から陸自へ引き継がれたのです。

今回サイバー教育の「総合実習」があった建物は平成9年にできましたが、「本館」は昭和の旧海軍当時からあり、築82年になります。赤絨緞を二階へ登った貴賓室の壁にはかつて天皇の御真影が掲げられ、いまは額だけが掛かっています。

戦前の風景が色濃く残る珍しい陸自駐屯地で、サイバーという最先端の領域で後れをとるなと自衛隊が人材育成に励んでいるのは、ちょっと不思議な光景でした。

米軍と初の「競技会」

陸自は8月22日には、米陸軍との間でサイバー競技会を開きます。通信学校で今回見たのと同じ旗取り合戦(CTF)で、日米各6チームが同じ問題を解く速さを競いますが、自衛隊と米軍が初めて太平洋を挟んでオンラインでつながる形で行います。

米陸軍はジョージア州のサイバー学校から、陸自は通信システム防護に関わる各地の部隊など4カ所から参加し、この久里浜の通信学校も教官たちがチームを組んで臨みます。サイバー先進国の米国相手に、どこまで健闘できるでしょう?

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最終更新:8/11(日) 7:00
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