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“いきなりケンシロウ”80年代に浸るジャンプ酒場の夜

8/12(月) 9:30配信

毎日新聞

 「おとなのジャンプ酒場」という名の居酒屋が7月11日、東京・新宿の歌舞伎町に登場した。「来たれ!! 80年代ジャンプ読者!!」と銘打たれ、週刊少年ジャンプ(集英社)の黄金期を支えた「キン肉マン」「DRAGON BALL」「北斗の拳」などのコラボメニューが並ぶ。1980年代をジャンプと生きた45歳の筆者が、さっそく現地に赴きタイムスリップしてきた。【毎日新聞経済プレミア・川村彰】

 「おとなのジャンプ酒場」は、かつて新宿コマ劇場があった場所からほど近い雑居ビルにある。エレベーターに乗り、お目当ての5階で扉が開くと、いきなりケンシロウ(北斗の拳)の壁紙が目に飛び込んできた。テレビアニメ版でケンシロウの声を務めた神谷明氏の「あたたた!!」という甲高い声が脳裏によみがえる。「北斗百裂拳」だ。80年代の小中学校の教室では、これをまねする同級生が必ず一人はいたはずだ。

 店内は50席ほどでそれほど広くない。少し暗めの照明の中、「シティーハンター」などテレビアニメ化したジャンプ作品の主題歌が次々と流れている。案内された席の壁には、当時の少年ジャンプ各号の表紙がこれでもかと張りめぐらされていた。

 一堂零(ハイスクール!奇面組)や前田太尊(ろくでなしBLUES)、鮎川まどか(きまぐれオレンジロード)など、当時、夢中になって読んだ作品のキャラクターを見つけるたび、懐かしさでため息が出そうになる。なかには、すっかり記憶から抜け落ちていた作品もある。「ジャングルの王者 ターちゃん」には、あれだけ笑わせてもらったのに、どうして忘れていたのだろうか。

 ◇店員が「決めぜりふ」

 最初に注文したのは「DRAGON BALL」のコラボメニュー。七つ集めるとどんな願いもかなう“ドラゴンボール”を模したミートボールだ。店員が主人公の孫悟空になりきり、「オッス! オラ悟空!」とノリノリで持ってきてくれた。

 このほか「ダイヤモンドダスト冷麺」(聖闘士星矢)や「槇村香の100tハンマーコブサラダ」(シティーハンター)など六つのコラボメニューを楽しんだが、店員がそのたびにいろいろなセリフを叫んでくれる。聞けば声優を目指していて、ここで働くためにいろいろと勉強してきたとのことだ。

 店内には、84年から88年までの少年ジャンプがすべて読める立ち読みコーナーもあり、好きだった作品の第1話や最終回を探すのは楽しい。他にもテレビモニターから流れるアニメ映像や各キャラクターのグッズコーナーなど、80年代に浸れる仕掛けがたくさん用意されていた。

 客層は30代から40代の男性が目立つが、女性の姿も意外に多い。後ろの席にいた30代前半の女性3人組に話を聞くと「子供の頃は兄が買ったジャンプがずっと家にあった」とのこと。「ドラゴンボールのファンだが、他にもいろいろ思い出して楽しいし、料理もおいしい」などと話してくれた。

 ◇ジャンプを“卒業”した大人たちへ

 少年ジャンプは「ONE PIECE」をはじめ、今も人気連載を多く抱えている。しかし店内には主人公「ルフィ」の姿すらない。コラボ作品を「80年代」に絞っているのはどうしてだろうか。

 仕掛け人の一人である集英社コンテンツ事業部の東秀人さんは「少年ジャンプは今も昔も現役読者の多くが未成年。現行の作品で居酒屋をやってしまうと、ほとんどの人は楽しめません。それより、子供の頃に一生懸命ジャンプを読んでくれた人たちに、ここで楽しんで帰ってほしい」と話す。

 80年代にジャンプを読みふけった筆者は今、45歳になった。ジャンプは“卒業”して久しいが、ここに2時間いただけで、薄れていた子供時代の記憶がありありとよみがえってきた。それは店内の仕掛けやコラボメニューだけのせいではない。他のテーブルから聞こえてくる会話もすべて“ジャンプ一色”で、お店全体が80年代に戻ったようだった。そんな「おとなのジャンプ酒場」、一度訪れてみてはいかがだろうか。

最終更新:8/12(月) 9:30
毎日新聞

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