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タイ洞窟の閉じ込め事故から1年 少年たちを翻弄する「ビッグな話」 耳打ちされた「取材拒否」の理由とは

8/17(土) 7:00配信

withnews

「インタビュー受けられない」 理由は……

 近くに親もいたので、少年たちにインタビューしていいか、きいてみました。すると、「カメラを向けたインタビューは控えてほしい」と言われました。

 マスコミが殺到して取材疲れがあるのでしょうか。しかし、理由は思わぬものでした。

 「子どもたちの映画をつくることになっていて、洞窟事件のことは映画制作以外では話してはいけない契約になっているの」とある母親。「本当はダメなんだけど、カメラを向けない『会話』なら平気だと思う」

 お寺だと目立つので、その後にあるサッカーの練習に来たらどうかと言われました。

 実は、アメリカの映画会社が洞窟救出劇を映画化する権利を独占的に取得。動画配信サービス「ネットフリックス」での公開を予定しています。

 タイ文化省の関連機関によると、少年らへのインタビューなどはこの映画会社が独占し、その代わりに少年らには1人あたり200万~300万バーツ(約700万~1000万円)が支払われるといいます。

 寺から車で15分ほどのサッカー場。ここは少年らが洞窟に入る直前まで練習していた場所です。

 近づくと、まずはコーチのエーカポン・チャンタォンさん(26)が答えてくれました。「本当にこの1年はたくさんのことがありました。洞窟では皆さんに迷惑をかけたけれど、その後子どもたちと一緒に世界を回ったのはとてもいい経験でした」

 少年たちは「奇跡の生還」で時の人となり、アメリカやイギリスに行く、テレビに出演する、有名サッカー選手と話すといった貴重な経験をしました。

 2019年には来日し、福島県で日本の子どもたちとサッカーの試合もしています。

 少年の1人、パヌマー・セーンリー君(14)は、日本に行ったことが一番の思い出。イギリスでサッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッド」の選手と会ったことも忘れられないと言います。

 「僕たちがたくさんの人のおかげで助かったことは忘れたくない。これからはむちゃなことをしないようにしっかり生きたい」。まっすぐな目で話しました。

 1年前は十数人だったチームも、洞窟事件で申込者が増え、今や40人が所属。コーチのエーカポンさんは「今の生活は以前と同じ。練習もしているし、来週は試合もあります」。

 そう答えたのち、小声で「あまり言いたくはないんだけど、いろいろな人に行動を見られている。どこのインタビューに答えただとか、どこに行ったとか、政府の人にきかれる。なんだか心が落ち着きません」

 救出された少年の1人、モンコン・ブンピアン君(14)の母親のナムホンさんも「とにかく洞窟の中であったことについては話してはいけない。親たちでつくった小さな会社が映画会社とやりとりをする窓口なのだけれど、いろいろ制約があるようで……」と言葉少な。

 「周りの人には『大金もらえて良いねえ』と言われるけど、まだ1バーツももらっていない。いくらもらえるのか、いつなのか、そんなこともわからない」

 母1人でモンコン君を育てるナムホンさんは今、職探し中。「生活は1年前と何も変わっていない」と言います。

 奇跡の救出から、一気に大人のビジネスに巻き込まれた感じのする少年たち。

 次に、現場だった洞窟を訪れると、様変わりした風景に驚かされました。

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最終更新:8/17(土) 7:00
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