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ヤクルト、中日、ロッテの潜在的価値 池田純氏「ヤクルトはジャイアンツ級になれる」

8/14(水) 7:31配信

VICTORY

セ、パ両リーグは7月11日、オールスターゲームまでの前半戦終了時点の観客動員数を発表し、1試合平均の観客数は昨年同期時に比べてセが4.5%増の3万4546人、パが同1.3%増の2万6432人となった。プロ野球観戦がブームとなっているといわれる昨今の状況を表す数字だが、球団別に見ると飛躍している球団、伸び悩んでいる球団と、それぞれの状況が見て取れる。

「特に、ヤクルト、中日、ロッテには、より大きく飛躍できる可能性を感じます」

横浜DeNAベイスターズの初代球団社長で、現在はスポーツによるさいたま市の活性化を目指す一般社団法人さいたまスポーツコミッションの会長を務める池田純氏に話を聞くと、具体的に3球団の名前が挙がった。あくまで池田氏は前向きな表現を使っているが、逆にこれらの球団がまだ持っている価値を最大化できていないともいえる。そこで、数字の面から探っていきたい。

最初に、冒頭で触れた2019年度の前半戦終了時点における球団別観客動員(1試合平均)を見てみる。右翼席上部に新スタンド「ウイング席」を増設したDeNAが昨季比13.3%増の3万1590人と飛び抜けた数字を叩き出している一方、ヤクルトは同0.4%の微増で1試合平均は2万6168人。本拠地のキャパシティーの違いはあるものの、セ・リーグでは唯一の2万人台で増加率も最低となっている。

中日は同5.1%増とまずまずの数字ながら1試合平均は3万977人。3万7000人近いナゴヤドームの客席数を考えると稼働率では少し余裕があるのが実情だ。ロッテは昨季比、1試合平均ともに12球団ワーストで2.5%減、2万1570人。ソフトバンクも昨季比で減少しているが、こちらは1試合平均3万6103人とパ球団唯一の3万人超えで、稼働率は90%超と同じ土俵では語れない。

続いて注目したいのが球団の運営会社の経営状況だ。決算が細かく一般に公表されているJリーグとは異なり、プロ野球球団の大半は詳細な決算を公開しておらず、巨人、中日は決算公告もないため比較が難しい面はあるが、公表されている数字から探る。

ヤクルトは2018年12月期の決算で当期純損失(赤字)として1201万円3000円を計上している。ロッテは昨オフに広島からフリーエージェント(FA)宣言した丸(現巨人)の獲得に乗り出す際にも話題になったように、昨季は50年目で球団初の黒字を計上した。決算公告によると、当期純利益は3億8500万円。伝統的に高い人気を誇る阪神が8億100万円、ここ数年で人気を拡大している広島が9億3000万円、DeNAが11億1800万円の純利益を計上していることから、観客動員面で上積みできれば、より良化が期待できる。

なぜ球団ごとに“格差”が生まれるのか。 ヤクルトは東京都心部、ロッテは98万人の人口を抱える千葉市、中日は日本3大都市圏の一つである名古屋市に本拠地を置くことから、潜在的なファンは多いといえる。それでも“ブーム前夜”にとどまる理由を、池田氏は「立地も良く、歴史もある球団は実は困っていないんでしょうね。本当に困らないと尻に火がつかないのが世の常。球団としてブランドになりたいという意思がもっともっと必要なのでは」と分析する。

球団経営で話題になるのが親会社による「広告費」名目での支援だ。かつては「球団経営は儲からない」との考え方が常識で、プロ野球球団を持つこと自体がステータスであり、球団はあくまで親会社のブランド価値を向上させるツールとみなされていた。スポーツで表立って金儲けをすることを「悪」とする風潮さえあった。

ただ、ここ数年でスポーツビジネスの概念が浸透し、スポーツをめぐるビジネス環境は大きく変わった。その筆頭格が、池田氏が初代球団社長を務めたDeNAだ。2012年の経営参画直後からさまざまな改革を実施。飲食、イニング間イベントの充実に代表される試合のエンターテインメント化などでライトなファン層を開拓。不可能と言われた本拠地・横浜スタジアムの運営会社買収(友好的TOB)を実現し、約25億円あった赤字を解消して黒字化も達成した。池田氏は既に社長を退任しているが、スポーツは今やDeNAグループの経営において重要な事業となっているほど。親会社を持たない広島も同様で、こうした新たな潮流が今のプロ野球ブームを生み出しているといっても過言ではないだろう。

では、そうした「ファンに刺さる」人気球団になるには、何が必要なのか。池田氏は「試合に勝った負けで刺さるのは一過性なもの。それだけに頼っていてはブランドにはなれません」とし、こう続ける。

「多様性が言われる時代。200人規模の組織では一般的な組織論からしてもリーダーがまず一番に大切。リーダーが何かを突き詰め、ブランドになるほどの『エッジ』を持たないと、どこにも誰にも刺さりません。何を考えているか分からない人より、人格が見える人の方が好き嫌い、賛否両論はあっても興味を持たれるのと同じです。企業には経営者やリーダーの人格がにじみ出るもの。ユニクロなら柳井正社長、ソフトバンクなら孫正義社長。中でも、プロスポーツの世界は特に経営者の人格が出やすい。『エッジ』が立っているものこそ、興味を抱かれるんです」

スポーツビジネスの世界で、その『エッジ』を持つには、何が必要なのか。池田氏は「遊びのプロ」であることを自身の『エッジ』として突き詰めている。

「私の遊び心を表現したのが横浜スタジアムです。音楽、音質など、一つ一つ自分ができる、知っている最大限の格好よさを追求し、共感を得られました。『お金のあるところ』以外に人が集まるのは『楽しいところ』なんです」

DeNAを陣頭指揮し、大きなうねりを球界にもたらした経営者だからこそ、言葉には説得力が生まれる。ちなみに、池田氏は「神宮球場の立地などを考えても、ヤクルトにはジャイアンツに並ぶ盟主になれる可能性すらあると思います」とも語っている。

VictorySportsNews編集部

最終更新:8/14(水) 7:31
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