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制約を強みに変える。命吹き込むアニメート『ごん-GON, THE LITTLE FOX-』メイキングvol.5

8/14(水) 12:04配信

CINEMORE

 ストップモーションのアニメートは1コマずつ順に撮り進める。手書きアニメのように、原画で主要な動きを書いてから動画に分担することはできないし、CGアニメのように何度も手直しすることはできない。全て一発撮りで、良くなければ最初から撮り直しだ。それがストップモーションが大変と言われる所以なのだが…、もちろん良い点もある。今回は『ごん』のアニメートについて取材した。

アニメーターは役者。身体感覚を人形に落とし込む

 『ごん』のアニメートは、ほぼ八代監督が担当している。脇役のカットはスタッフに任せることもあるが、主人公のごんや兵十は監督自ら動かしている。どのように動きの設計をしているのだろうか。

 撮影に立ち会うと、監督はしばしば不思議な動きをしていた。ふと作業の手を止めて、突然ジャンプをする。これは実は、自分の体を使って人形にさせる動きをシミュレーションしているのだ。ジャンプする時、どこに力が入り、手足はどういった順番で動くか。実際に動くことで得た感覚を人形にトレースする。

重力の制約、人形の制約

 ストップモーションのアニメートは実物を使っている以上、必ず重力という制約を受ける。金属製の関節が入った人形は、持ってみるとずしりと重い。歩きなど重心が不安定になる演技をさせるには、倒れないよう支えが必要だ。

 そこで「吊り具」という専用の器具を使う。ボビンからテグス(糸)を繰り出し、人形に引っ掛けて上から吊る。体重を支えられ、重力から解放されてはじめて、軽やかに歩く演技をつけることができる。

 しかし吊り具も万能ではない。ひらけた所を歩くカットは、人形の頭の上が空いているので吊り具を使うことができるが、家の中など天井があるシーンでは使えない。人形の体に棒を刺して支えたり、足にピンを刺したり、カットごとに様々な方法で固定をする。実はこの固定作業が、ストップモーションアニメーターがもっとも頭を悩ますところだと言っても過言ではない。

 制約は人形の身体の中にもある。『ごん』では、火縄銃を撃つシーンが何度か登場するが、銃を構えるには、耳とくっつくほど肩を上げなければならない。人間にはたやすい動きだが、人形ではそうはいかない。肩の関節の可動域を大幅に広げる必要があった。

 通常のアーマチュア(金属関節)の設計なら、腕の付け根に球体関節が1つ入っているだけだが、今回は首の付け根あたりにも球体関節を入れ、肩全体を大きく動かせるようにした。

 この改造によって、肩でハァハァと息を切らしたり、首をすくめるなど、従来はできなかったアニメートもできるようになった。一つの制約をクリアすることで、さらに他の効果も生み出すことができた好例である。

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最終更新:8/14(水) 12:04
CINEMORE

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