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なぜA220は中部でデモフライトを実施したのか 特集・日本の100-150席市場を考える

8/15(木) 0:24配信

Aviation Wire

 エアバスがボンバルディアから買収した小型機A220のデモフライトが、中部空港(セントレア)で8月6日に開かれた。国内の航空会社や航空機リース会社などの招待者を乗せ、東海から北陸、甲信越地方を時計回りに約1時間フライトし、機内の静粛性や快適性をアピールした。A220はすでに海外の航空会社の機体が就航しているが、メーカーによる関係者向け試乗会は今回が初めてだ。

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 A220を2018年7月に買収するまで、エアバスは主力のA320neoファミリーに100-150席クラスの機体を持っておらず、A318(最大1クラス132席)やボーイング737-600型機(同132席)などの後継機市場を担う機体サイズが空白になっていた。

 しかしなぜ、エアバスは日本初となるA220のデモフライトの地として中部を選んだのだろうか。

◆中部乗り入れは10社

 A220は、ボンバルディアが開発した小型旅客機「Cシリーズ」の新名称。A220-100(旧CS100、100-135席)と、中胴が3.7メートル長い長胴型のA220-300(旧CS300、130-160席)の2機種を製造している。ボンバルディアはエアバスとボーイングの新世代機が不在の100-150席機市場を、Cシリーズで制するプランだったが、開発費がかさんだことなどで業績が悪化。エアバスへの事業売却につながった。

 来日したエアバスのマーケティング・ディレクター、クリスティン・ド=ガニュ氏は、今回のデモフライトを中部で行った理由を、「航空会社から中部で開いて欲しいという要望があった」と説明する。

 中部には現在、日本航空(JAL/JL、9201)とグループの日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)、全日本空輸(ANA/NH)、スカイマーク(SKY/BC)、エア・ドゥ(ADO/HD)、ソラシドエア(SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)、アイベックスエアラインズ(IBEX、IBX/FW)、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)、エアアジア・ジャパン(WAJ/DJ)の10社が乗り入れている。

 このうち、中部を拠点とするのはエアアジア・ジャパンだが、彼らはA320(1クラス180席または186席)による安定的な運航を現時点で重視しており、すぐに導入するかというと難しいだろう。同じくLCCで、A320を運航するジェットスター・ジャパンも機材は増やすものの、パイロットがA320のライセンスで運航できるA321LRのような機種のみ。IBEXはリージョナルジェット機のボンバルディアCRJ700型機(1クラス70席)で、A220とは市場が異なる。

 JALの中部路線とJTA、スカイマーク、ソラシドは737-800で、現状の2クラス165席(JALとJTA)や1クラス177席(スカイマーク)、1クラス174席(ソラシド)より小さい100-150席クラスの機種を導入する可能性は低い。同じ機材で国際線も飛ばすスターフライヤーは、シートピッチに余裕を持たせたA320(1クラス150席)を使用している。また、エア・ドゥはANAグループとのつながりが密接で、機体は737-700(1クラス144席)や幹線用の767-300(1クラス286席、288席、289席)で、ともにANAが運航していた機材だ。

 つまり、これら9社は今のところ、A220を導入する積極的な理由は見受けられないということになる。

◆後継機選び迫るANAウイングス

 残るはANAだが、中部-札幌(新千歳)線や福岡線などに、同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)の737-700(2クラス120席)を、路線によってはさらに小型の737-500(1クラス126席)を投入している。737-700は導入から10年以上、737-500は20年以上が経過しており、後継機の選定が迫りつつある。7月30日時点の保有機数は、737-700が8機、737-500が7機で、24機あるターボプロップ(プロペラ)機のボンバルディアQ400(DHC-8-Q400)型機(1クラス74席)よりも少ない。

 ANAグループで地方路線を担うANAウイングスにとって、頭の痛い問題は三菱航空機が開発を進めている三菱スペースジェット(旧MRJ)の納入遅延だ。Q400の後継だが、現時点で5度の延期で2020年中ごろの初号機納入となっており、Q400の追加発注や737-500の退役延長で遅延をしのいでいる。

 また、関係者の話を総合すると、すでに数年前からANAHDの中期経営計画は、当時のMRJが納期通りに入手できることを前提にはしておらず、仮に再び遅れることがあっても、ANAグループの経営に与える影響が限定的になるよう、安全策を採っているようだ。実際、1機目が納期通りに引き渡されても、2機目以降も順調に納入される保証はない。

 90席クラスのMRJの納入遅延で、やや席数が多い737-500もあおりを受けているが、機齢20年を超えている現状は、さすがにそろそろ限界だ。そして、国内航空会社の元首脳によると、737-700は日本の国内線の場合、中途半端な機体サイズなのだという。「737-700の座席数であれば、少し大きい737-800のほうが採算性がいい」(元首脳)と、日本では737-700があまり受け入れられなかった背景を説明する。

◆737 MAX 7より低コスト

 かつてボンバルディアは、直接の競合機ではないとしながらも、737-700の後継である737 MAX 7(2クラス138-153席)や、同サイズのエアバス機であるA319neo(2クラス140席)と比べ、Cシリーズは燃料消費量を20%、運航コストを乗客1人あたり18%、整備コストを25%抑えられると説明していた。737 MAXの墜落事故を除いても、A220は性能面で優位だ。

 A220の性能は当時と大きくは変わっていないので、ボンバルディアが示している通りの性能であれば、現在ANAウイングスが737-700や737-500を飛ばしている路線こそ、A220に適した路線といえるだろう。

 A220のエンジンは、低燃費・低騒音が売りとなる新型の米プラット・アンド・ホイットニー社製GTF(ギヤード・ターボファン)エンジン「PurePower PW1500G」。二酸化炭素(CO2)排出量は20%、窒素酸化物(NOx)排出量は50%削減できる点がセールスポイントのひとつで、スペースジェットも同じシリーズのエンジンを採用している。

 客室はキャリーバッグを4つ収納できる大型のオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)や、A320と比べて15%大きい窓など、居住性の高さもアピールポイントだ。1列あたりの座席数はエコノミークラスの場合、2席-3席の5席配列を採用しており、リージョナル機(1列4席)とA320(同6席)の中間となる。3席の中央席はシート幅をほかの席より1インチ(約2.5センチ)広い19インチ(約48.3センチ)とし、窓側席と通路側席の間になる分、広くした。

 ボンバルディアが販売していた時代、性能の高さから実機に乗った人は皆高く評価していたCシリーズ。エアバスのラインナップとなった今、日本の航空会社が飛ばす可能性は以前よりも高まったと言えそうだ。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:8/15(木) 9:36
Aviation Wire

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