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消費増税でシニアが節約するのは「ペット、牛肉…」

8/15(木) 9:30配信

毎日新聞

 消費増税が目前に迫った。前回増税時の反省からさまざまな負担軽減対策が打ち出されているが、消費はどのような影響を受けるのか。日本総合研究所の小方尚子主任研究員が解説します。【週刊エコノミスト編集部】

 ◇正味の負担増は年3万円程度?

 本年10月の消費増税では、軽減税率、教育無償化、年金世帯向け給付金、プレミアム付き商品券、キャッシュレス決済ポイント還元など、手厚い負担軽減策が講じられる。

 背景には、前回2014年の増税時の家計負担増が、個人消費を長期にわたって冷え込ませたことへの反省がある。前回は消費増税に加えて、厚生年金保険料の引き上げや年金給付の引き下げが実施されたほか、政府による家計支援策も限られていた。そのため、1世帯当たりでみた正味の負担額増は年15万円にものぼったが、今回は年3万円程度に抑えられる見込みだ。

 ただし、負担軽減策の効果は世帯によって異なる。負担軽減度が最も大きいのは、子どものいる世帯を含む「2人以上の勤労者世帯」となっている。これは幼児教育と高等教育という二つの無償化政策が、低所得世帯を中心に大きな効果をもつためである。幼児教育無償化では、3~5歳の子どもの幼稚園・保育所の利用料を政府が原則、全額補助する。高等教育無償化は低所得世帯を対象に、大学、短大、高専、専門学校の入学金・授業料と給付型奨学金を支給する。

 これらの対策効果で、年収1000万円未満の2人以上の勤労者世帯では、負担軽減額が消費増税額を上回り、ネット増減で受け取り超過となる。超過幅は、年収750万円世帯では可処分所得比で約0.1%と負担が相殺される程度にとどまるものの、年収250万円世帯では3.6%にのぼる。低所得世帯では、もともと保育料が低く抑えられており幼児教育無償化の効果はほとんどないが、高等教育無償化の恩恵が大きく表れている格好だ。

 また、消費税の問題点として、低所得者ほど収入比でみた税負担が大きくなる「逆進性」がよく指摘される。しかし、今回は各種の負担軽減策により、2人以上の勤労者世帯に限ってみれば、逆進性の問題が緩和される見通しだ。

 ◇年金世帯は消費を控えそう

 これに対し、年金世帯では消費増税額が負担軽減額を上回り、0.6%の負担超過となる。年間収入が78万円以下の低年金者には、負担増を上回る年6万円の年金生活者支援給付金が支給されるが、対象者は年金生活者全体の2割程度しかいない。さらに単身勤労者世帯では、対象となる負担軽減策が軽減税率のみとなるため、負担超過幅が1.0%とより大きくなる。よって今回の消費増税では、負担増の大半が年金世帯や単身勤労者世帯に集中することになると言える。

 年金世帯は現在、世帯数の増加を背景に支出金額ベースで消費市場全体の3割を占めているため、負担増に伴う消費下振れが目立つ可能性がある。65歳以上の世帯で消費支出が減る場合、減りやすいのは支出弾力性が高い品目だ。特に大きな影響が出るのは、ペット関連やゴルフなどの運動用具、身の回り用品となっている。また、軽減税率対象の食品についても見てみると、高齢者世帯では、牛肉、緑茶、豆腐、まぐろなど、購入単価が高いものが多い。増税後は、これらの品目で節約の動きが広がるだろう。

 ◇ポイント還元効果はつかみづらい

 今回の消費増税では、マクロの消費全体の動きもこれまでとはかなり異なるものとなりそうだ。

 まず、増税前の駆け込み需要の盛り上がりだが、前回は増税の1年前から盛り上がりを始めていたのに対して、今回は4月以降に、やや拡大し始めた程度にとどまっている。理由としては、春先まで増税再延期論がくすぶっていたこと、増税規模が前回より小さいこと、さらに10月以降に中小企業でのキャッシュレス決済時にポイント還元される措置を利用したほうが、むしろお得なものがあることが挙げられる。そのため、9月末までの駆け込み需要の「山」が前回よりも低くなると見られ、そのぶん10月以降の反動減の「谷」も浅くなる見通しだ。

 一方で、今回の大きな特徴となるのが、キャッシュレス決済ポイント還元の終了前後に、2度目の駆け込み需要と反動減が生じると予想される点である。ちょうどこの時期に開催される東京五輪の開催が消費押し上げ要因となるため、基本的に消費の谷は1回目よりもさらに浅くなる。

 だが、「ペイペイ」をはじめとするキャッシュレス業者のポイント還元イベントが、いずれも当初計画より短期間で予定還元額の上限に達している結果を踏まえると、想定以上に山が膨らみ、それに伴って谷も深くなる可能性も残る。ポイント還元に絡むイベントによって、消費全体の動きも頻繁な浮沈が見込まれるため、今後1年以上にわたって消費の基調は見えにくい状況が続くことになりそうだ。

(週刊エコノミスト8月13・20日号から)

最終更新:8/15(木) 9:30
毎日新聞

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