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「そこは蒸気機関士の意地なんです」 岩手「SL銀河」で感じた鉄道マンのカッコ良さ:月刊乗り鉄話題(2019年8月版)

8/15(木) 12:10配信

ねとらぼ

 2019年現在、日本で運行されているSL列車は主に12種類あります。その中でもっとも所要時間が長い、つまり、もっとも長時間で楽しめる列車はJR東日本が運行する「SL銀河」です。

【その他の画像】「大正ロマンと銀河鉄道の夜」車内の様子

 運行区間は岩手県の花巻駅と釜石駅の間。所要時間は下り列車が4時間31分、上り列車が4時間22分です。な、長い……。いくら乗り鉄だからって、4時間も同じ列車に乗り続けて飽きないのか。先に結果を言うと飽きませんでした。てへ。

 ではSL銀河の旅に出掛けましょう。

 私が乗った列車は釜石駅10時58分発の花巻行き。前日まで三陸鉄道リアス線の新規開業区間を巡り、釜石のビジネスホテルに宿泊。たっぷり睡眠を取って、釜石港まで散歩して、アタマも身体もスッキリさせてから釜石駅へ。

 プラットホームに上がると4両編成の青い客車が待っています。金色で花や鳥が描かれて、夜の星空のイメージです。SL銀河は宮澤賢治と代表作の1つ「銀河鉄道の夜」をモチーフに作られました。でも、銀河鉄道の夜でジョバンニとカムパネルラが乗った列車って、SL列車ではないんですけれどね。ジョバンニが「この汽車石炭をたいていないねえ」と言うと、カムパネルラが「アルコールか電気だろう」って答えるんです。ああ、無粋なこと書いちゃったな。ごめんなさい。

 しかし、車内は宮澤賢治の世界です。座席や窓枠など室内のインテリアは大正ロマンがテーマ。ステンドグラスもあってきらびやか。宮澤賢治が生きていた頃の世界観のようです。そして最大の特徴はプラネタリウム!! 定員10人ほど、約15分間の上映です。しかもプラネタリウムは無料。アテンダントさんから時刻を指定した整理券をもらいます。今回は遠野で降りるお客さんが多かったので、花巻まで行く人は遠野出発のあとの回になりました。

独特の「揺れ」が楽しい その理由は…

 ポッ、と汽笛が聞こえました。蒸気機関車が先頭に連結された合図。いよいよ出発です。4時間22分の銀河鉄道の昼の旅が始まります。今度はポーオーッと長い汽笛。ガシャンと連結器が鳴ります。そしてゆっくりと釜石駅を離れます。駅員さんやショッピングモールを訪れた人々が手を振って見送ってくれました。

 車窓の右側には転車台と蒸気機関車の車庫がありました。甲子川(かつしがわ)を渡ると、右手に線路が分かれていきます。あれは「三陸鉄道リアス線」です。もともとJR東日本の山田線の一部でした。しかし東日本大震災で沿岸区間が津波に流されてしまいました。長い協議の末、JR東日本が線路を復旧させた上で、三陸鉄道に事業を移管させた区間です。車窓の左手、甲子川がいったん離れていきます。しかし市街地が終わる頃、またこちらの線路に寄り添います。釜石線は陸中大橋駅付近まで、甲子川の谷間を走ります。

 蒸気機関車の汽笛と駆動音が谷間に響き、次第に線路は高くなって街を見下ろす風景になります。窓の外を時々煙がたなびいていきます。SL列車の車窓の特徴ですね。でも、他のSL列車とは乗り心地が違います。耳を澄ませば、ディーゼルエンジンのような音が混じっています。そして揺れ方も左右の揺れだけではなく、「前後方向にも」小刻みに揺れています。他の列車だと、加速中は引っ張られる感覚だけです。でもSL銀河はちょっと違う。引っ張られつつ、時々戻るような感じです。

 なぜこのような音と挙動になるのか。実は、SL銀河の客車はディーゼルエンジンを搭載しており、蒸気機関車と力を合わせて坂を上るからです。蒸気機関車が走る。客車も走る。だからディーゼルエンジンの音が聞こえて、お互いの速度の小さな誤差が前後方向の揺れになるのです。他のSL列車は客車に動力がないので引っ張られるだけ。音も静かです。

 SL銀河の客車にディーゼルエンジンがある。その理由は、ディーゼルカーを改造したからです。急勾配の釜石線でSL列車を応援するためのアイデア。JR東日本はJR北海道のディーゼルカー「キハ142」を4両購入しました。

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最終更新:8/15(木) 12:10
ねとらぼ

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