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ホルムズ海峡、すでに有志連合軍あり

8/15(木) 12:40配信

ニュースソクラ

米軍中心のCMF、トランプは知らなかった?

 トランプ大統領がホルムズ海峡の安全確保のため、各国が軍隊を出し合う「有志連合」の結成を唱えたことで、自衛隊の中東派兵問題が浮上している。だが、商船の安全確保のための米軍中心の有志連合は実はすでにあり、海賊退治部隊にはすでに海上自衛隊が参加している。

 この有志連合は、バーレーンに本部を置く「CMF(コンバインド・マリーン・フォース、連合海上部隊)」で、ペルシャ湾の外側の海洋安全保障のためのCTF150(第150連合任務部隊)と海賊対処を目的にするCTF151、ペルシャ湾の海洋安全保障のためのCTF152の3部隊からなる。

 海上自衛隊はジブチ沖などの海賊対処のために、このCTF151部隊にすでに参加しており、司令部には海自の将校が常駐している。もともとは湾岸戦争のあと、地域の海洋の安全確保のために作られた連合軍が源流になっている。

 防衛白書でも常に記述があり、2018年度の白書では「CMFは米中央軍の隷下で海洋における安全、安定、繁栄を促進することを目的として活動する多国籍部隊。30か国の部隊が参加しており、CMF司令官は米第五艦隊司令官が兼務している」とある。

 すでに有志連合はあるのだから、日本も海賊対処だけでなくCTF150などにも参加すれば、自国に関係する商船保護のための「有志連合」に参加したという格好はつく。
 
 この有志連合は、米軍が中心とはいえ、米軍に各国部隊に対する指揮権はなく、作戦遂行のための統合司令部の機能もない。CMF本部は、各国から集まった連絡将校の合議体でというのが実際のところだ。

 この範囲であれば、自国に関係する民間船の護衛ということであれば、海上警備行動として警護する(近くを一緒に航行して護衛し、攻撃やそれが見込まれる状況であれば武器も使う)行動は、国内法でも規定している行動であり、新たな法律などは必要ない。

 問題は、トランプ大統領が米軍の指揮下での大軍の終結を目指し、実質的なイランへの威嚇をイメージしているのではないか、ということだ。

 いまあるCMFの枠組みを使うような「ゆるい出兵」には、トランプ大統領が満足せず、同盟国のあかしを見せよともっと強力な派兵を求めてくる可能性はある。8日の日米防衛相会談では、CMFの活用も含め、有志連合とは何か、日本にどこまで期待しているのか、細かく話し合われたと思われる。

 だが、米国防総省にもトランプの真意がわかっているのか、定かではない。

 日本の防衛省は、このCMFのうちいまは加わっていない部隊への参加をベースに、特にペルシャ湾外の警備をしているCFT150への参加なら、と答えている可能性が高い。

 これまでのトランプ大統領の発言から読めるのは、彼が既存のCMFの存在を知らなかったのではないかということだ。機動性の高い既存組織の活用が時間の節約になると考えるのかもしれない。一方、新味がないと政治的に嫌うかもしれない。トランプはいつもの通り、不透明要因だ。

 ホルムズの有志連合問題には、もうひとつの不確定要因がある。中露の出方だ。両国とも有志連合に前向きな姿勢を見せ始めている。場合によってはCMFを改組して、米軍中心の構成も改めたり、国連安保理も絡んだ部隊を検討することになるのかもしれない。

 中露が入るとなれば、イランの有志連合に対する敵愾心は薄れるのだろうが、それでは、イランを追い込みたかったトランプ戦略は狂う。

 トランプ主導の有志連合の議論がどう決着するのか。論点も多いだけに、時間がかかりそうだ。

■土屋 直也(ニュースソクラ編集長)
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設。

最終更新:8/15(木) 12:40
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