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トランポリン女王・森ひかるが挑む 日本人初の五輪金より高~い光

8/16(金) 11:01配信

東スポWeb

【「令和」に刻む東京五輪 気になる人をインタビュー】高く、美しく。その魅力に幼少期から取りつかれ、空中アクロバティックの世界にのめり込んだ女性がいる。女子トランポリン界の第一人者・森ひかる(20=金沢学院大クラブ)は天才少女と呼ばれた中学時代に「日本一」の座をつかんだ。11月の世界選手権(東京・有明体操競技場)の代表権も早々と獲得。最大の狙いは2020年東京五輪で日本人初となるメダル獲得だが、その先にもっと大きな夢がある。トランポリン愛が生んだ野望とは――。

 運命の出合いは4歳で訪れた。母・美香さんと行った近所のスーパー。屋上に設置された子供用トランポリンを踏んだ瞬間、何かが爆発した。まるで「跳びはねること」が宿命のように、時を忘れて無我夢中で遊んだ。

 森:7分間くらいだったかな。一度も止まらず、ずっと跳び続けたのを覚えています。空を飛んでいるような感覚が楽しかった。それ以来、母とスーパーに行けばトランポリンができると知り、何度も「また行きたい!」ってお願いしましたね。

 当然、遊具では満足できなくなる。クラブに入って本格的にトランポリンを始めると一気に才能が開花。天から授かった跳躍力を生かし、2011年の世界選手権11~12歳の部で優勝した。

 中学に入ると高難度の大技「トリフィス」(3回転宙返り2分の1ひねり)を習得。中学2年で出場した13年の全日本選手権で史上最年少V(14歳)の快挙を達成した。遊びで始めたトランポリンは、この時点で人生の「軸」になった。とはいえ、本気で「トランポリンをやめよう」と考えたこともあった。

 森:小学4年の時、着地で手を突いて骨折。6年生になると多くひねるようになった分、トランポリンの上に体がバーン!って落ちるんですよ。ケガの怖さが出て、もう最悪。もうやめようと思いましたが、初の世界大会が1週間後にあったので、やめられませんでした。

 高校1年の時、大きな決断を下した。高校選手権の試合でミスをし、帰りの車内で母と2人で号泣。この時、トランポリン王国の石川県金沢市へ移住を決心した。

 同県はトランポリンが地域に根ざし、競技人口も日本一。自宅から体育館まで車で10分、徹底的にトランポリンに向き合うには最適の環境だ。当時はすでに東京五輪招致が決まっており、親子二人三脚で夢舞台への挑戦がスタートした。

 森:後悔だけはしたくなかった。五輪を本気で目指すには、この道しかないと覚悟しました。ずっとパリ五輪(24年)までやろうと思っていましたが、今回初めて五輪選考に関わって、もうこんな思いはしたくない(笑い)。練習はきついし、精神的にもつらい。やっぱり五輪ってスゴいって思いましたね。

 昨年10月の全日本選手権で2度目の優勝。今年4月のW杯シリーズ第2戦で世界選手権の選考基準を満たし、いち早く代表入り。上位8人に入れば東京五輪出場枠を獲得できるが、選考会を戦ううちに「練習が嫌になり、眠れない日も続いた」とプレッシャーを感じた。

 それでも「東京五輪出場」へ歩みは止めない。昨年から基礎トレーニングを徹底的に行い、練習量はさらに増加。「やらないと罪悪感が生まれる」というほど自分を追い込んできた。

 徹底的に競技に向き合うようになり、大きな夢もできた。それは大好きなトランポリンを世に広め、マイナー競技から脱却させることだ。

 森:野球やサッカーって日本が負けてもニュースになりますよね。でもトランポリンは世界大会で優勝してもほぼニュースにならない。地上波のテレビでも放送されないし…。だから東京五輪でメダルを取って母の首にかけて、トランポリンを有名にする! それが最高の結末ですね。

 取材の最後に「結婚願望は?」とぶつけてみた。「ありますよ!」と即答した後、すぐに「でも引退した後。結婚がトランポリンの邪魔になったら最悪なので(笑い)」と付け加えた。

 自らの人生に「幸せ」を与えてくれた競技に恩返しできる日まで、すべてを犠牲にする。そう腹をくくっている。

【トランポリン】2000年シドニー五輪から正式種目に採用。技の姿勢や安定感などの出来栄えを表す「演技点(E得点)」、回転やひねりの数を算出する「難度点(D得点)」、選手が宙に浮いている滞空時間を1秒1点として反映させる「跳躍時間点(T得点)」、着地位置の正確性を減点法で算出する「移動点(H得点)」を加算し、その合計得点で競う。

 1回の演技で10本の跳躍を行い、上位8人が決勝に進出。決勝では予選の得点がリセットされるため“下克上”の魅力もある。

 森の最大の武器はジャンプの高さ(跳躍時間点)。最高到達点は世界トップクラスの約5メートルといわれる。これは建物の2階天井付近、キリンの首の位置に相当する。

☆もり・ひかる 1999年7月7日生まれ。東京都出身。4歳でトランポリン教室に通い始める。2013年の全日本選手権を史上最年少(14歳)で制覇。高校1年の時、トランポリンを極めるため石川・金沢市に移住。18年の世界選手権シンクロナイズドでは非五輪種目ながら日本初の金メダルを獲得。同年の全日本選手権で2度目のV。身長159センチ。

最終更新:8/16(金) 11:04
東スポWeb

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