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『ダンスウィズミー』の三吉彩花、極限のプレッシャーを乗り越えてつかんだものとは?

8/18(日) 10:30配信

Movie Walker

『スウィングガールズ』(04)の矢口史靖監督によるコメディミュージカル『ダンスウィズミー』(8月16日公開)で、日本中からのオーディションでヒロインに選ばれた、女優でモデルの三吉彩花。ダンスシーンでは、スレンダーな彼女の長い肢体が、大いに映える。本作は歌って踊れる女優、三吉のポテンシャルを最大限に引き出し、コメディエンヌとしての才能も開花させた。「これまで演じたなかで一番苦労した役」と言う三吉に、本作に懸けた想いや女優としての展望について聞いた。

【写真を見る】三吉彩花と三浦貴大のロマンティックなダンスシーンにうっとり

三吉が演じるのは、一流商社に務めるOL、鈴木静香。ところがある日、怪しい催眠術師(宝田明)から、“音楽が流れると、歌い踊らずにいられない”という催眠をかけられ、携帯の着信音やテレビの音など、あらゆる音が耳に入った瞬間、ところ構わずミュージカルスターばりに歌って踊りだす体質になってしまう。

■ 「プレッシャーで極限状態まで追い込まれました」

クランクインの2か月前から、歌や踊りを猛特訓したという三吉は、「極限状態まで追い込まれました」と告白する。「主演のプレッシャーと、初めてのコメディミュージカルということで、いろいろな方がすごく期待をしてくださっている作品だったので、いい作品にしなければいけないと思いつめてしまって。また、本作で披露するダンスもヒップホップからポールダンスまで多岐にわたっていたので、自分のスキルがまだまだ足りないと痛感していました」。

その結果、三吉はクランクイン前に体調を崩してしまった。「その時は歌ったり踊ったりできないので、どういうふうに気持ちを保っていけば良いのかといろいろ考えました」。

そんななか、静香と共に旅をする斉藤千絵役のやしろ優や、ストリートミュージシャンの山本洋子役で演技に初挑戦したアーティストのchayと現場で意気投合し、次第に撮影を楽しめるようになっていったそうだ。「皆さんとの共演シーンが増えていくと、自分は1人じゃないという安心感が出てきて、気持ちが切り替えられるようになっていきました」。

三吉はやしろたちとすっかり仲良くなり、撮影がない日も会ったりしていたそうだ。「3人とも職業や雰囲気は全然違いますが、実は、すごく性格が似ているんです。いい意味で、人に対してまったく干渉をしないタイプで、いつも他愛ない話をしていました。すごく波長の合う3人だったので、良かったです」。

自身が演じた静香と三吉は共通点があまりなかったが、だからこそ演じやすかったそう。「自分に重ね合わせられる役だと演じづらい、というわけではないのですが、自分だったらどうするか?と考えすぎてしまうんです。モデルのお仕事の場合、“三吉彩花”として服をどう魅せるかと考えますが、女優業では、“自分”の存在はいらないと思っていて。だから、自分と近しい役の時、三吉彩花として考えているのか、それともその役がそう思っているのかがわからなくなってしまうことがあります。実際、そういう経験が過去にあって悩みました。でも、今回は矢口監督が思い描く静香に近づけることだけを考えてお芝居をしていきました」。

■ 「大勢でやるダンスシーンはかなり大変な撮影でした」

ダンスシーンは実にバリエーション豊かだ。ロマンティックにステップを踏むシーンから、大勢でのヒップホップダンス、魅惑のポールダンス、アクロバティックなアクションと、三吉は曲に合わせていろいろなパフォーマンスを繰り広げる。

「レストランや会議室など、物がたくさんある中、大勢で撮影するシーンも多かったので、かなり大変な撮影でした。例えば、静香が務める会社の会議室でのシーンでは、社員の人たちも巻き込んで一緒に踊りだしますが、最終的に机の上にシュレッダーの中の紙をぶちまけるシーンがあって。一度OKが出ても、また別のアングルで撮らなければいけないので、全員がばらまかられた紙をかき集め、毎回掃除をしてから再度、最初から撮り直さなければいけなかったんです(笑)。また、マンションの中でモップを使って踊るシーンも、テーブルやソファの高さや長さによって、当日少しずつ振り付けが変わったりしたので、皆さんと臨機応変にやっていきました」。

高級レストランでのシーンも強烈なインパクトを放つ。山本リンダのヒット曲「狙いうち」に合わせてのダンスだが、三吉が艶っぽい目つきで身体をしならせ、ギャラリーを挑発していく。その後、テーブルクロス引きを3連発で行うが、なんと三吉は1テイクで成功させたようだ。「レストランでのシーンは4日間くらいかけて、ブロックごとに撮っていきました。クロス引きは先生に教えていただきましたが、やってみると『ああ、こういうふうにすれば誰もができるんだ』と納得し、意外とできました。躊躇なく斜め下に引けば、大丈夫です(笑)」。

また、ワインを飲みながら歌い、踊っていくシーンは、撮影後のアフレコが難しかったという。「歌いながら飲んでいるというシチュエーションなので、飲むタイミングなども考えなきゃいけなかったんです」。

なかでも目を見張るのは、後半でシャンデリアにぶら下がり、レストランを左右にぶんぶんと飛び回る、空中ブランコさながらのシーンだ。「あれはワイヤーで吊るされましたが、自分の力だとどれくらいの高さで振れるかと、研修を受けてから臨みました。実は私、高いところが苦手なんです。ジェットコースターの高さくらいまでいっちゃうと大丈夫なですが、公園のブランコなどちょっと浮いている感じもダメなほうなので、ちょっと苦労しました」。

今回、初めて仕事をした矢口監督については「こんなに役者に寄り添って演出してくださる監督には出会ったことがないです。本当に優しい方ですし、演出はとてもわかりやすかったです」と心から感謝する。「役者さんやスタッフさんに対して、すごく言葉を選んでくださる監督で、誰も傷つけないように言ってくださいます。また、ご自身が撮りたい画を忠実に教えてくれますし、表情やリアクションなどを、監督自身が1回やって見せてくださることもあります。とにかく演出が非常にわかりやすいんです」。

矢口監督自身の印象については「最初は、一体監督は、なにを考えているのだろう?と全然わからなかったんですが、撮影が終わったあと、印象がまったく変わりました」と言う。「本当にピュアで少年のような方。ごはんや服なども好みがはっきりしてらっしゃって、好きなパターンがあるようです。大御所の監督ですが、ちょっとかわいいなと思ってしまう少年っぽさがあります」。

■ 「モデルと女優で、二面性を見せていきたい」

7歳でモデルとしてのキャリアをスタートさせた三吉が、女優業のおもしろさに目覚めたのは、中島哲也監督作『告白』(10)の現場だったそうだ。彼女は端役で、生徒の1人を演じた。「学園ものだったので、生徒役の子たちが大勢いました。湊かなえさんの原作を中島監督でと、いま考えるとそうそうたるキャストやスタッフの方々に囲まれた現場でした。その時はお芝居に対して、楽しさよりも難しさや恥ずかしさのほうが勝っていました。自分の芝居をどうしたら上手くやれるのかもわからなくて。冒頭で牛乳を飲むシーンがありますが、あのシーンは中島監督が1人ずつ生徒役の子を呼び出して、演出をつけてくれたんです」。

それは、松たか子演じる森口教諭が、生徒たちにHIV患者の血液入りの牛乳を飲ませるという緊迫感に満ちたシーンだ。「生徒全員、1人ずつ撮ったので、誰がどんな動きをしているのかまったくわからないわけです。ああ、いま、自分の想像力を試されているなと感じ、そのとき初めて、自分のオリジナリティというか、自分の役がどうふうに印象に残せるかと考えました。そこで、役を追求していったらこんなにも楽しいのかと気づかせてもらったんです」。

彼女の女優としてのスタンスは「“三吉彩花”を消して、役を活かす」というものだ。「台本を読んでバックボーンを想像しながら、自分の日常生活も役と一緒に生きていけたらと。もちろん作品によっても違うし、いつも役にどっぷり浸かるわけではないのですが、そういうふうにできたらいいなと思っています。例えばテレビドラマ『エンジェルハート』はアクションが多かったのですが、常に五感が研ぎ澄まされている役だったので、外に出る時は、街中の音を意識したり、テーブルの上にあるものを瞬時に取れるような瞬発力を鍛えたりしていました。普段から役と向き合い、なるべく監督が思う役の理想像に近づけたいとは思っています」。

モデル業と女優業という二本柱については「いま、すごくバランスが取れているから、どちらかにしぼる気はまったくないので、どちらも並行して、二面性を見せていきたいという気持ちです」としながら「ただ、そのなかで、年々自分がやりたいことが明確になってきている」という。

本作で得た手応えについて聞くと「私はモデルとして初めて芸能界に入り、そこから女優業を含め15年くらいやってきましたが、やっとこの作品で、自分が思い描くビジョンへのスタートラインに立てたと感じています」と、目を輝かせる。

「今回、初めてのコメディミュージカルということで、チャレンジできたという達成感が大きかったですし、女優として自分をどう見せていくかについても学ぶことが多かったです。ミュージカルも、いつかできたらいいなと思っていた分野ですが、今回でより身近になったので、舞台でもやってみたいと思いました。本作は静香の成長物語ではありますが、私自身も一緒に成長させてもらったという実感があります。今後、女優としては、自分が演じた役柄や作品が、観てくれた人にどういう影響力を与えるのかを考えていきたいですし、大きく言っちゃうと自分にしかできないと思えるような役に巡り会いたいです。

また、海外へ出たいという気持ちが以前よりも一層強くなっているので、もっと人脈も広げていきたいし、海外では自己紹介もなるべくして自分を売り込んでいけるようになりたいです。そういう意味では改めて初心に返り、基本的なことをより大事にしていきたいと思いました。女優に限らず、モデルとしてももっともっと経験を積んでいきたいです」。

(Movie Walker・取材・文/山崎 伸子)

最終更新:8/18(日) 10:30
Movie Walker

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