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軍介入は「コストが高すぎる」。香港デモ対応でジレンマの中国指導部

8/19(月) 8:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

中国共産党の習近平指導部は、香港抗議活動の収拾をめぐり30年前の「天安門事件」以来、最大のジレンマに直面している。

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空港占拠や中国記者への暴行へと発展した活動を、中国政府は「テロリズムの兆候」と非難。隣接する深セン市で軍用車両の大量集結が伝えられ、人民解放軍が介入する最終局面に入ったとの観測も出始めている。

経済不安から政治危機も

中国の軍介入は政治的には「下策中の下策」である。

鎮圧が流血の事態を招けば、天安門事件と同様、欧米を中心に強い非難が巻き起こり、経済制裁も覚悟しなければならない。資本の海外逃避も予想され、「時限爆弾」の債務問題にも飛び火するかもしれない。習政権が命運をかける「一帯一路」も、「壮大な夢物語」に終わりかねない。

共産党の一党独裁の正当性は、経済成長による国民生活向上と富裕化によって保証されている。経済の急激な落ち込みから、国民生活にしわ寄せが及べば、経済・社会の安定は失われ、政治の不安定へと連動する。毎年10万件にも上るとされる住民と当局との衝突事件はこれまで、地方政府が批判の対象だったが、今度は中央政府が標的になるだろう。

主権と統一の回復は「神聖な任務」

これまで香港問題には口を挟まなかったトランプ米大統領が8月13日、Twitterで初めて懸念を表明したことも、問題を複雑化させている。共産党指導部にとって「外部勢力の干渉」は、特別な歴史的意味を持っている。

香港と台湾は、アヘン戦争以来列強に収奪された領土と主権の象徴的存在だ。主権と統一の回復は、共産党の存立基盤を支える「神聖な任務」なのだ。2019年1月、習氏が発表した台湾政策も、台湾への武力行使を放棄しない理由として、「台湾独立」と「外部勢力の干渉」が挙げられている。

一方、香港抗議運動の要求は、当初の「逃亡犯条例」の完全撤回や、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の辞任から、完全な普通選挙の実施や香港独立まで、過激化する一方だ。

運動を抑えられず、香港独立の主張を放置すれば、中国共産党は「神聖な任務」を放棄することになる。それは「共産党の指導」と「統一」という核心利益を自ら手放すことを意味する。分離独立の動きが顕在化しているチベットや新疆ウイグル、さらには台湾「独立」を勢いづかせる結果を招いてしまう。

軍介入という力による鎮圧は経済的打撃を招きかねないが、運動を放置すれば「共産党の指導」と「統一」が失われかねない。ジレンマはまさにここにある。

トランプ氏がツイートした日、中国外交担当トップの楊潔チ(ようけっち)共産党政治局員がひそかにニューヨークで、ポンペオ国務長官と会談した。楊氏はおそらく「外部勢力の干渉」に対しては、武力行使を厭わない決意をポンペオ氏に伝えたはずだ。「レッドライン(越えてはならない一線)」のクギを刺し、アメリカに自制を求めた可能性がある。

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最終更新:8/19(月) 20:00
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