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【沈黙をこえて】「君が好き」と抱きついてきたジャーナリスト 迫ったのは「君のせい」?

8/19(月) 14:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

 性被害を告発する「#MeToo」(「私も」の意)運動が広がる一方で、私たちの社会には依然として性暴力や性差別がはびこっている。元記者の20代の相田茉莉さん(仮名)は尊敬していた男性ジャーナリストから性的関係を強要されたほか、取材先で何度もセクシュアルハラスメントに遭い、上司の無理解にも心を痛めて職場を去った。メディア業界で働く女性の現実を見つめる。

氷山の一角

 「表に出たのはほんの少しだけ。声を上げられない人がたくさんいます」

 メディア業界で次々と性被害が明るみに出てなお、相田さんはそう感じている。

 「社会に女性蔑視はDNAのように組み込まれています。1ミリずつでも変えていかないといけません。おかしいと思ったことに声を上げ、それが積もり積もって変化になります。私たちができるのはそれしかありません」

 淡々とした口調ながら相田さんは信念に基づき、過去の出来事を語り始めた。

「君のせい」

 相田さんは学生時代、日本で暮らす外国籍の子どもたちの支援に取り組んでいた。記者を志したのは、懸命に生きるそんな子らの姿をいつか報じられたらとの思いからだったという。

 大学3年の頃、何人もの記者に会いに行く中で、当時50代の男性ジャーナリストと知り合った。業界で名の知れたその男性に、相田さんは尊敬の念を抱いていた。

 「この機会を生かすことは働く上ですごく大事で、とにかく吸収したいと思っていました」

 同じ記者志望の友人を交えて何度か食事し、仕事や時事問題について語り合った。男性から娘が自分と同年代とも聞いた。

 記者職の内定を得たことを報告すると2人での食事に誘われた。店ではいつもと変わらず仕事の話をしたが、店の外に出ると突然抱きつかれた。

 「本当に君が好き。付き合ってほしい」

 名誉を傷つけず、どう断ればいいか。混乱する気持ちを抑えながら頭を巡らせ「尊敬していますが、そういう感情はないです」と何度も伝えた。

 だが、手を引っ張られ、力ずくでホテルに連れ込まれそうになった。相田さんは「入ったら終わり」と思い、地面に座り込んで「絶対に嫌です」とわめいた。その後も男性に抱きつかれ「キスするだけ」「1回だけ、1回だけ」と言われ、顔をつかまれるなどされた。

 「できる限りの抵抗をし、その日は終わりました。なぜキスなら許されると思うのか。なぜ『真剣に好き』なら無理矢理ホテルに連れ込んでいいと思うのか。1人で過ごしているとじわじわと恐怖がよみがえってきて、その恐怖心にどう対処したらいいのか分からず、誰に話したらいいのかも分かりませんでした」

 男性からは後日、メールがきた。文面にはこうあった。「これから記者として頑張ってください。若さだけを武器にする人にはならないでください」。君に迫ったのは君のせいでもあるんだ、とでも言いたいのだろうか。相田さんは怒りを覚えたという。

 数年後、その男性から電話が掛かってきた。声を聞くと汗がだらだらと流れてきた。男性は当時のことを覚えていない様子だった。

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最終更新:8/19(月) 14:00
カナロコ by 神奈川新聞

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