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築地で、東京すしアカデミーで。魚が怖いアメリカ女性が日本の魚文化を学ぶ『サカナ・レッスン』――食卓から考える(2)

8/19(月) 18:00配信

本がすき。

『サカナ・レッスン 美味しい日本で寿司に死す』CCCメディアハウス
キャスリーン・フリン著/村井理子訳

うまい、安い、早い――。

忙しい現代人のお腹を満たすための魔法の食べ物のようなインスタントやレトルト食品は、食品スーパーの売場を席捲し、日夜激戦が繰り広げられているコンビニエンス・ストアでも不動の定番商品として君臨しています。

料理に時間が割けなくても、何より簡単で便利で賞味期限も長くて安い、と来たら買わない理由はほとんどなさそうですが、そんな夢のような料理が実在するわけではありません。

あくまで、グラタンは「グラタン風」でしかなく、カレーやパスタソースの原材料は、食品加工関係者にしかわからない、魔法陣のような記号と解読不可能なカタカナで満たされています。

いつまでもカビのはえないパンと、すぐダメになってしまうパンのどちらを選ぶべきなのか。選択肢は一つしかなさそうですが、その答えがマーケット上では不正解なのを、日々のコマーシャルは教えてくれます。

なぜ、レモン味の炭酸飲料が無果汁なのか? など、多くの人がこうした食べ物に根本的な疑問を抱かない原因は、時間がないからで、自分の経験を顧みて言うならば、おいしいものを食べるのは好きだけれど、それを自分で作ることにあまり興味がなく、またそれができるとも思っていないからではないかと考えています。

かつて、シェアハウスに住んでいたときに、台所が共有で、住人は曜日ごとに晩御飯を担当していました。引っ越した初日に、本気を出して、納豆と卵とパスタをかきまぜて、永谷園のお茶漬け海苔をふりかけて、サーブしたところ、住人たちから「とても美味しかった」「最高だよ」と口々にほめたたえられましたが、その後、私に料理当番がまわってくることはありませんでした。

怒涛のように押し寄せる仕事や、友人たちからのSNSに返答している間に、私たちが今一体何を飲み、食べているのか? などという疑問が脳裏をかすめることはありません。こうした手軽な食べ物と時短料理への依存は、もちろん、日本だけではなく、世界中で進行しています。その象徴こそが、スーパーマーケットの食品売場です。

スーパーの買い物カートには、その人の人生が詰まっている――。

箱詰め加工食品や冷凍食品や缶詰ばかりを選んでいるアメリカ人の母親の買い物カートをつけまわし、大胆にも話しかけて料理の方法を伝え、しっかりと献立を考えて食材を買えばオーガニックの方がむしろ安く、健康になれるのだと教えた女性がいます。

37歳で世界屈指の料理学校、ル・コルドン・ブルーを卒業したキャスリーン・フリンがそのひとです。

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最終更新:8/19(月) 18:00
本がすき。

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