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人間が生物を絶滅させることは「失敗」なのか?

8/19(月) 10:11配信

ニュースイッチ

動物ライター・丸山貴史氏に聞く「これ以上の絶滅、人間の失敗に」

 今も生息している生物の陰には、たくさんの絶滅した生物たちがいる。彼らはかつて強者として繁栄したが、環境の変化で絶滅した。絶滅は進化の「失敗」なのだろうか。『わけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』著者の丸山貴史氏に話を聞いた。(昆梓紗)

 ―絶滅しない生存戦略はあるのでしょうか。
 「ゼネラリストである有袋類の『オポッサム』は、白亜紀から生き残っている。彼らはどんな環境でも生きられるのが強み。でも、あまり繁栄していない。環境に高度に適応した結果、数が増えたり、体が大きくなったりすると、ほかの生物を押しのけて繁栄はできる。しかし環境に適応しすぎた生物は、それが少しでも変化すると崩れてしまう」

 「例えば中生代に生息していた魚竜は、イカに似た『べレムナイト』を主食にしていたため、その数が減ると絶滅してしまったと言われる。それでも数千万年は繁栄したので、戦略に失敗したとはいえない。太く短く生きるか、細く長く生きるかの違い。ビジネスでいえば、時流に乗って一山築いてすぐ撤退する企業と、昔ながらの商売を堅実に続ける老舗の違いだろうか」

 ―果たしてどちらが成功でしょうか。
 「どちらも成功で、『長生き派のゼネラリスト』『繁栄派のスペシャリスト』の違いだろう。両者に濃淡はあるが、基本的にはトレードオフの関係だ」

 ―絶滅は生存戦略の「失敗」ですか。
 「ある時期までは成功していた戦略も、環境が突然変化すれば通用しなくなる。地球環境は刻々と変化し続ける。生物にとって絶滅は失敗ではなく必然なのかもしれない」

 ―現在、1番栄えている生物は何だと考えますか。
 「種数や個体数なら昆虫。ただ1番存在感のある種を挙げるなら、人間だ。ホモ・サピエンスが登場してからまだ25万年程度だが、急ピッチで増殖し、地球の環境を改変し続けている」

 ―そんな人間が絶滅して「〇〇すぎて絶滅」と紹介するなら。
 「『増えすぎて絶滅』。今のままでは食糧不足になるのは目に見えている。最新刊では、数が多かったのに絶滅した生物として『ロッキートビバッタ』を掲載した。最盛期は12兆5000億匹もの群れが観察されたが、そのわずか28年後に絶滅した。いくら数が多くても、短期間で滅びることは実際にある」

 ―人間が他の生物を絶滅させたことは人間の「失敗」ですか。
 「前作では読者からの『人間は残酷だ』との意見が多かった。そこで続編では人間が絶滅させたことに対し、いくつかの意見を掲載した。例えば、有史以前の狩猟による絶滅は現代人が責任を感じるべき問題なのか。現在は漁業、畜産業で繁殖させた生物を食べているが、なぜ数の少ない生物を食べてはいけないのか。正解はないし、意見がいろいろあっていい。ただし、今後も人間が生物を絶滅させ続けるとしたら、それは明らかな『失敗』だ。そうならないためにも、さまざまな生き物の絶滅理由を知ることは有意義なのではないか」

【略歴】

法政大卒業後、ネイチャー・プロ編集室勤務を経て、ネゲブ砂漠で『ハイラックス』の調査に従事。現在は、図鑑の編集・執筆などをしている。『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』『おもしろい!進化のふしぎ 続ざんねんないきもの事典』などの執筆を手がける。

日刊工業新聞・昆梓紗

最終更新:8/19(月) 10:11
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