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[大弦小弦]八紘一宇の塔

8/19(月) 7:40配信

沖縄タイムス

 今年の8月15日は宮崎市にいて「八紘一宇(はっこういちう)の塔」を訪ねた。仰ぎ見る36メートルの存在感。何より、侵略戦争のスローガンが21世紀の空に突き立っていることに圧倒される

▼刻まれた八紘一宇は「世界を一つの家にする」意味。神武天皇の伝説に由来し、宮崎はゆかりの地とされる。塔は太平洋戦争を始める前年の1940年に建てられ、日本主導の世界秩序実現を宣伝した

▼よく見ると、土台部分には「南京」や「河北省」の文字がある。礎石は侵略した地域からも集められた。中国の博物館が4年前に返還を求めたものの、管理する宮崎県は「塔の取り壊しはできない」と断っている

▼実は、八紘一宇の文字は敗戦後、米軍の指摘を受けていったん削られた。ところが65年にはもう地元経済界主導で復元された。名前だけは「平和の塔」と呼び換えられた

▼塔の姿が、日本と二重写しになる。大日本帝国は崩壊し、「平和国家」に生まれ変わったことになっている。しかし実態はどうか。元首だった昭和天皇は皇位にとどまり、戦犯容疑で逮捕され不起訴とされた人物が首相になった。日本は本当に変わったのか、周辺国の信頼はいまだに得られない

▼自民党議員の一部は八紘一宇を「建国の理念」「家族主義」などと称賛し続けている。空っぽな戦時スローガンが繰り返しよみがえり、平和国家の空っぽな内実を問うている。(阿部岳)

【訂正】初出で「戦犯が首相になった」とあったのを、「戦犯容疑で逮捕され不起訴とされた人物が首相になった」に訂正しました。(8月20日午後6時半)

最終更新:8/20(火) 18:50
沖縄タイムス

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