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社説[続く香港デモ]武力介入は絶対避けよ

8/19(月) 7:40配信

沖縄タイムス

 香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を発端に、完全撤回を求める香港の抗議活動が2カ月以上にわたって続いている。

 民主派団体は18日も大規模な抗議集会を開催。警察はデモ行進を許可しなかったが、数十万人が雨が降りしきる中強行した。香港情勢は緊迫度が一段と高まっている。

 当初、抗議活動は平和的に行われていたが、アジア有数のハブ空港である香港国際空港ロビーなどを占拠して多くの航空便を欠航させたり、一部若者が中国記者に暴行を加えたりするなどエスカレートした。自制が必要だ。

 香港当局は改正案の完全撤回を拒否し、催涙弾や警棒を使い、多数の負傷者を出すなど強硬姿勢を強めている。過剰警備はやめるべきである。

 1997年に香港が英国から返還された際、中国政府は「一国二制度」と「高度な自治」を約束した。しかし改正案は中国の非民主的な司法を香港に持ち込み、中国に批判的な活動家らが引き渡される恐れが消えない。

 懸念されるのは中国政府が武力介入を辞さない姿勢を繰り返し表明していることだ。

 香港と接する中国広東省深圳市の競技場に集結した人民武装警察部隊(武警)は1万人規模との情報もある。国内で暴動鎮圧やテロ対応などを任務とし、習近平(しゅうきんぺい)国家主席をトップとする党中央軍事委員会の指揮を受ける武装組織だ。デモ制圧訓練の映像を公開し抗議活動をけん制している。

 国際社会は、民主化を求める学生らを軍が武力弾圧し、多数の死傷者を出した1989年6月の天安門事件を忘れていない。武力介入は絶対にやってはならない。

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 長期化するデモ隊と警察の衝突は香港経済に大きな打撃を与えている。

 日本や米国、オーストラリアなど約30の国・地域が渡航者に注意を促す情報を出し、8月初旬の観光客は前年と比べ3割余り減少した。

 香港は世界有数の金融都市で、外資による対中投資の重要ルートになっている。人民元の国際取引にも不可欠な市場である。武力介入すれば、経済的に最も損害を受けるのは中国自身なのである。

 トランプ米大統領は抗議活動について「(中国政府の)暴力による鎮圧は見たくない」と、習氏と近く電話協議することを提案した。習指導部はデモ隊の激化は「テロに近い行為」と断じ、米国を「内政干渉」と非難する。

 先行きは見通せないが、米中両国は混乱収拾に向けた協議に力を合わせるべきだ。

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 学生を含む多くの市民が大規模デモに参加しているのはなぜなのだろうか。

 改正案によって香港で享受できていた自由が奪われかねないことに対する強い危機感があるからだ。

 林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は米中貿易摩擦に加え、抗議活動で香港は「内憂外患」と言っている。ならば林鄭氏は、改正案の完全撤廃に踏み切るべきである。その上で市民らとの対話を始める。

 それが悪化する事態を早期に収束させる道である。

最終更新:8/19(月) 7:40
沖縄タイムス

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