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エアバスがA220を日本でお披露目(2)A220の構造とメカニズム(その1)

8/20(火) 11:32配信

マイナビニュース

デモツアーのために中部国際空港に飛来したエアバスA220の

構造やメカニズムについて取り上げることにしよう。まずは、身近に接する機会が多いと思われる、客室と貨物室から。え、貨物室に乗る人はいないだろうって ?

【写真】主翼前方のクローズアップ。「AIRBUS」の「BU」の下に、貨物室用の扉が見える 撮影:井上孝司

客室レイアウト

与圧によって生じる機体内外の圧力差に耐えやすくするため、飛行機の胴体は真円、あるいは楕円形にする。そして単通路型旅客機の場合、左右の腰掛の列数が同じなら通路が中央に来るので、最も高さがある部分に通路が来る。

ところがA220の普通席は、列数が左右で異なる非対称配置だから、通路の位置も中心線からずれている。すると、「頭上空間の設計はどうなっているんだろう?」という疑問があった。写真を見てもよくわからない。

そこで実機に乗った時にじっくり観察してみたところ、左右でオーバーヘッド・ストウェージの形状が違っていた。下面のカーブが、右舷側は緩く、左舷側はきつい。右舷側のオーバーヘッド・ストウェージは、左舷側のそれよりも少し大きく張り出しているようだ。

これによって、通路の空間を胴体の中心線よりも左舷側に少し寄せて、通路の頭上空間を確保する設計になっている。ただし、やりすぎると今度は、左右対称配置になる上級クラスの客室との整合性がとれなくなる。どれぐらい非対称にするか、いろいろ検討したのではないだろうか。

座席が左右非対称配置になると、当然ながら、そこに乗客が座った時の左右の重量バランスが非対称になるから、それを想定した設計・運用が必要になる。ちなみに、バランス計算に際しては大人の乗客1名につき84kgとして計算している由。

今回のデモツアーで飛来した機体は、前回にも書いたように、社内試験用機である。だから、エアラインで就航している機体とは異なる点がいくつかあるが、その1つがシートピッチ。

実機を観察してみたところ、30in(約762mm)間隔のところと、32in(約813mm)間隔のところがあった。このほか、29in間隔と31in間隔の席もあるという。試験・検証のために、意図的に複数の寸法を用意してあるのだろう。

最近の旅客機の常で、腰掛の背ズリはかなり薄く、クッションは固め。しかし、フワフワならいいというものでもなくて、要はちゃんと身体をホールドしてくれることが重要である。表面はファブリックではなく革張りで、これは旅客機の腰掛ではよくある仕様。

客室まわりのいろいろ

窓のサイズは高さが16in(約406mm)・幅が11in(約279mm)。エアバスによると「777より大きい」とのこと。シェードは上から不透明の板が降りてくる一般的な構造で、窓そのものが不透明になる電子シェードではない。

頭上に読書灯が付いているのはお約束だが、それがLEDになっているのが、今時の機体らしい。さらに、今時の機体らしいと思ったのは、禁煙サインとスマートフォン使用禁止表示灯の存在。離着陸時、電波を発する電子機器の使用を禁止する場面で後者が点灯する。


機体が小型なので、ギャレーやラバトリーはキャビンの前端と後端にまとめて配置してある。国際線にも使用する機体だから、ちゃんとしたギャレーが付いている。

上水タンクへの給水と汚水タンクからの抜き取りは、機体後部下面に設けたパネルを開いて行う仕組みで、この辺は機体規模の大小とは関係ないようだ。他機でもたいてい、この辺りにある。

ちなみに、左舷前部・L1ドアの辺りに、客室乗務員が機内のあれこれを管制するためのパネルがある。ここでは、ラバトリーの状況や清水・汚水の状況を確認することもできる。そのキャビン・マネジメント・システム、それと機内エンターテイメント・システムがパナソニック製。

エアバス製品になる前に作られた機体だから仕方ないけれど、その管制パネル画面に「BOMBARDIER」と昔の名前が表示してあったのはご愛敬。もちろん、今の量産機は「AIRBUS」と出ているはずだ。

機体はカナダ製、エンジンはアメリカ製だ。なお、2019年8月からアメリカのアラバマ州モービルでも、A220の製造ラインが稼働している。アメリカ向けの機体はモービルで作ることになるのだろう。

貨物室

胴体断面が小さいリージョナル機は、客室と同レベルで、客室の前方あるいは後方に貨物室を設けることが多い。エンブラエルのE-Jetは床下貨物室だが、胴体断面が小さいから、かなり高さが抑えられるのは致し方ない。

一方、リージョナル機よりも1クラス上のA220では、胴体は二層構造になっていて、客室の床下に貨物室を設けている。だから、胴体右側面の下方に、前後それぞれ1カ所ずつ、貨物室にアクセスするための扉が付いている。

前方貨物室は、前端から扉後端部までの「前方貨物室1」と、それより後方の「前方貨物室2」に、後方貨物室は前端から扉後端部までの「後方貨物室1」と、それより後方の「後方貨物室2」に分けられる。

前後の貨物室ともコンテナは使用しないバラ積みで、扉に仕切りのネットを取り付けて、中身が飛び出さないようにしている。そのため、床と天井にはネットを固定するためのアンカー・プレートがいくつか用意されている。また、貨物を固定するための金具(タイダウン・ポイント)も用意されている。

貨物室の高さは1.08mだから、中で立って作業をするのは無理そうだ。最大幅は2.2mだが、丸みを帯びた胴体の下半分だから断面形状は六角形で、下部の幅は0.84mになる。長さは前方貨物室が7.03m、後方貨物室が全長8.37m。後方貨物室のうち、後端2.24mは胴体の絞り込みにかかっているため、高さが少なくなる。

地上にいる時に後方貨物室で先に積み込みを実施すると、前後重量バランスの関係で機体が尻餅をついてしまう可能性があるので、前方貨物室から先に積み込みを行うそうである。


著者プロフィール


井上孝司

鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。

マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。

井上孝司

最終更新:8/20(火) 11:32
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