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クルーズ船が寄港しても地域振興に貢献しない、は本当か

8/20(火) 7:00配信

ITmedia ビジネスオンライン

 日本のクルーズ市場が“緩やか”に拡大するにつれて、ネガティブな意見も目立つようになってきた。

大型クルーズ船の船内

 最近注目された意見では、木曽崇氏の「クルーズ振興の不都合な真実:正直、普通に儲かんない」や、その元ネタとなっている中村智彦氏の「豪華客船にお金持ちは乗って来なかった~クルーズ船寄港地の憂鬱」、そして、アレックス・カー氏と清野由美氏による「『クルーズ船で観光振興』はとんでもないウソだ」がある。

 木曽氏と中野氏の主張は「クルーズ船の船客は寄港地の観光店で消費せず観光振興に貢献しない」というもの。また、カー氏と清野氏は、奄美大島で計画されている大型客船寄港地計画に対して「外資による大規模ショッピングモールを主軸としたゼロツーリズムは利益を外資が全て持っていく」と主張している。

 中野氏の主張は、長崎で観光業に携わる中小企業経営者から聞いた「下船した船客は諫早の免税店に。地元(長崎市の商店街)にお金を落とさない」という話を主な根拠としており、木曾氏は「クルーズ観光は周遊型観光の典型。その寄港地観光もクルーズ船の重要な収益源で地元業者に売上を渡すわけがない」と主張している。

クルーズ船の経済効果は観光業以外にも

 ただ、寄港するクルーズ船の経済効果は観光業だけにとどまらない。その1つが港湾使用に関する収入だ。船が入港して岸壁に係留し、出港するまで、次のような経費がかかる。

・曳き船チャーター料(入港時)
・水先案内人徴用料(入港時)
・岸壁使用料
・曳き船チャーター料(出港時)
・水先案内人徴用料(出港時)

 日本の主な地方港湾における港湾利用にかかる料金は次のようになっている(出典:日本港湾協会。値は総トン数10万トンの外航船舶が12時間以内係留した場合の価格)

 これらの価格は早朝・深夜などの時間外作業、荒天時作業で5割り増しに近い追加料金がかかる。また、クルーズ船の場合は、オプションツアーに参加したり港の近隣を観光したりする船客のために、上下船の手続きをするスペースや、送迎バスまたはタクシーを駐車させるスペースなどの利用料金も支払っている。

 上記の料金の内、入港料と岸壁、桟橋使用料は港湾を管理する自治体の収入となるが、綱取り・綱放し料金(着岸、離岸時における係船策の受け取り固定、取り外し受け渡し作業にかかる料金)、曳船(タグボート)、水先料(水先案内人に支払う経費)は、それぞれ、“地元”の港湾作業業者、タグボート運営企業、水先案内人協会に支払う。いずれにしても、寄港地の地域収入となることに違いはない。

 もっとも、港湾使用に関する収益はクルーズ船でなくとも発生する。例えば貨物船だ。しかし、貨物船などの利用回数は、その港湾がある地域の産業(主に製造業と農水林業)と域内人口の状況によって定まる。地域産業における原料受け入れ量と生産物出荷量、域内人口が消費する物量によって、貨物船の入出港回数は定まり、その物量はその地域に新たな産業が興らないと大きく増加しない。

 加えるに、新たな産業を興すための投資は膨大な額になる。クルーズ船の誘致は、新たな産業を興さずとも、旅客ターミナルと既存岸壁の拡張に関する投資で、その港湾にとって入出港する船舶を増やすのに大きく貢献する。さらに、クルーズ船の多くは総トン数が大きいため、少ない入出港回数でも大きな収入を得ることができる。

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最終更新:8/20(火) 7:00
ITmedia ビジネスオンライン

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