ここから本文です

【#しんどい君へ】揺れる「いじめ防止法」…放置した教職員を懲戒すべきなのか

8/20(火) 10:03配信

読売新聞オンライン

 滋賀県大津市で2011年、中学2年の男子生徒が自殺し、その際の学校と教育委員会の対応が不適切だったことをきっかけに、13年に「いじめ防止対策推進法」が成立した。その後も、いじめによる自殺や学校のずさんな対応は絶えないため、現在、超党派の国会議員の勉強会(座長=馳浩・元文部科学相)が改正を目指しているが、いじめを放置、助長した教職員を懲戒処分とする規定などをめぐり、取りまとめは難航している。

 「いじめ自殺は後を絶たず、学校ではいじめの放置や隠蔽(いんぺい)が繰り返されている。法律に具体的対応策を定め、実効性を高める必要がある」
 21年前、神奈川県立高校の1年生だった一人娘が同級生からいじめを受け、自殺した小森新一郎さん、美登里さん夫妻は、取材に対してそう話した。
 小森さん夫妻は娘を失った後、いじめ防止に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」を設立し、活動してきた。
 昨年12月には改正案の素案が公表され、いじめを許さない環境を作る計画の策定や教職員への懲戒など具体的な規定が盛り込まれた。2人は今年3月に議員の勉強会に呼ばれた際には、こうした内容を維持するよう要望した。
 だが、全国の校長会など教育関係団体からは反対の声があがった。特に、公立校教員の懲戒規定は地方公務員法にあるため、「新たに定める必要はない」という声が強かった。
 文部科学省も17年3月には、学校などの具体的な対応策を示した「いじめ防止基本方針」を改定。その中で、「けんかやふざけ合いでもいじめの有無を確認する」ことを追加し、学校現場では、積極的にいじめを確認するようになっている。

 教育関係団体からの反対を受け、今年4月に示された改正案の「座長試案」では、教職員の懲戒規定など新しい内容の多くが削除された。
 日本の教員は極めて多忙で、経済協力開発機構(OECD)が6月に公表した調査結果では、日本の小中学校教員の勤務時間が加盟国・地域などの中で最も長いことが明らかになっている。
実際、教育現場からも、「教員の負担が増す」という声のほか、「懲戒規定は教職員のモチベーションの低下を招くので反対だ」「懲戒規定を設けると、いじめを隠す方向に傾いてしまうおそれがある」「現場の萎縮(いしゅく)を招く」との反対意見が出ていた。
 一方、いじめ被害者の遺族からは、「規定があれば教職員が緊張感を持って対処してくれるはずだ」「いじめの問題を情報共有して組織として対応してくれれば、懲戒となるような問題は生じないのではないか」との指摘も出た。
 4月22日に開かれたいじめ被害者の遺族らの記者会見では、同席した教育評論家の尾木直樹さんも、「教員らに子どもの命と安全を預かっている自覚と緊張感を持ってもらうためにも明記すべきだ」と強調した。
 いじめ防止法が制定された際、参院議員の政策秘書として関わった金子春菜弁護士は、「法改正の議論の中で、教師が萎縮するとか学校の負担が増えるとかいった指摘があるが、そもそも、子どもたちの命と尊厳を守るための法律だということを忘れないでほしい」と話す。
 議員勉強会のメンバーからも、「(昨年12月公表の)素案に示した具体的な規定の多くは、すでに国の基本方針に明記されており、現場に新たな負担を求めるものではない。これに対して、4月に示された座長試案には具体策がなく、子どもの命は守れない」との反発の声があがる。
 今後、勉強会が法改正を目指すには、遺族や教育関係団体それぞれの主張の妥協点を見いだし、意見調整をすることが欠かせないと言えそうだ。

1/2ページ

最終更新:8/24(土) 11:54
読売新聞オンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事