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正社員が死ねば12点減点、下請け労働者なら4点減点…「死まで差別」

8/20(火) 16:31配信

ハンギョレ新聞

「キム・ヨンギュン特調委」クォン・ヨングク幹事インタビュー 発電会社経営評価で元-下請け労働者の死に差別 「危険を構造化する元・下請けの階級構造をなくさなければ」

 「発電5社の内部経営実績評価指標によれば、元請け労働者が死亡すれば公式に則り人数に12をかけて減点するが、下請け労働者については4をかけて評価点数を減点します。元・下請け労働者の死を差別していることが数値にも現れています。酷い話でしょう?酷すぎます」

 「故キム・ヨンギュン氏死亡事故の真相究明と再発防止のための石炭火力発電所特別労働安全調査委員会」(特調委)幹事として4カ月にわたり調査活動をしてきたクォン・ヨングク弁護士は18日、ハンギョレと会い「元請け・下請け労働者に対する処遇差別は、結局人に対する差別につながる」と話した。昨年12月、忠清南道泰安(テアン)火力発電所で、ベルトコンベアーに挟まって死亡した下請け労働者のキム・ヨンギュン氏にとって、国民の“平等権”を保障するという憲法第11条は空文だった。正社員と非正社員、元請けと下請け所属という“身分”差別は、処遇の差別だけではなかった。下請け所属という“レッテル”は、死の瞬間までも元請け正社員との差別を合理化する。そのためにクォン弁護士は「第2のキム・ヨンギュン」を防ぐためには、下請け労働者に危険を集中させる元請け・下請け間の序列構造をなくすべきということが特調委の結論だと説明した。以下はクォン弁護士との一問一答だ。

-今回の調査結果に満足しているか。

=依然として不十分な点が多い。特調委の調査に抜けている部分があるためだ。今回の調査は、故キム・ヨンギュン氏の事故と直接関連のある発電所民間協力企業の労働者の処遇と安全問題を対象になされた。彼らと同じ環境で仕事をする清掃・警備下請け企業の職員の労働条件や、競争体制導入後の発電会社の正規職労働者の労働強度の変化などに対する調査が抜けている点は心残りだ。

-特調委調査の過程で難しかった点は。

=公企業である発電会社は、政府機関が監督するので上級機関が指示すれば協力した。だが、特調委が強制できない民間下請け企業などの場合、営業上の秘密などを理由に職員に対する処遇や安全・技術分野投資の有無を確認できる精算書などの資料提出を拒否されることが多かった。

-現場調査で会った労働者のうち、記憶に残った人はいるか。

=下請け労働者が、なぜ危険にさらされざるを得ないのかを説明した労働者がいた。例えば、現場で火災が起きれば、協力企業の職員がすぐに元請けに連絡して指示を受けるのでなく、現場の代理人や所長を経て報告し、再びその手続きにより指示が下りてくる。下請け労働者は、先に火を消して別の問題が発生した時「なぜ指示してもいない仕事をしたのか?」として、ややもすればさらに大きな責任を負わせられるので何もできない。

-なぜそのような愚にもつかない状況が発生するのか。

=不法派遣を避けるために、元請けは協力企業の職員との報告体系の形式をとても複雑にしているためだ。設備が老朽化したり、設計が誤っていて危険が発生する場合、下請け労働者は自分たちが仕事をする設備を元請けの指示なしには改善する権限が何もない。設備は下請け企業が所有しているわけでなく、発電会社のものであるためだ。これは、故キム・ヨンギュン労働者の死亡事故原因でもある。今のような構造では、下請け労働者は自身に迫った危険から自分で抜け出すことはできない。

-とても無力感をあたえる話だ。

=その下請け労働者がした話も「私たちの言うことに力を与えてほしい」ということだった。元請け・下請け構造は、安全な労働環境を作ることと完全に背馳する。元請け労働者の代わりに、下請け労働者が改善を要求し、それが受け入れられれば良いのだが、元請け企業と下請け企業とは垂直的な関係だ。下請けは元請けの指示に従うほかはない立場なので、下請け労働者の要求は無視されたり反映されないということだ。

-それなら元請けの直接雇用が解決策になる筈だが、それは可能だろうか。

=事業主が今のように元請けと下請けに分離した構造では、安全な職場を作ることはできない。発電所の下請け労働者に対して、元請け事業主である発電会社は責任を負わない。そのために、故キム・ヨンギュン氏が仕事をした韓国発電技術で人が死亡したり労災が発生しても、元請けである西部発電は安全大賞を受賞し、労災保険料も数十億ウォン(数億円)も減免されたのだ。自身が責任を負わないのに、資金を投じて設備を改善する理由はない。反対に、下請け企業の労働者は、自分の会社の労働者が改善を要求しても「権限がない」と言って元請けに責任を転嫁する。元請けと下請けが、労働者の安全に対する責任転嫁をしている状況で「責任の空白状態」が発生するわけだ。2008年からの10年間に、発電所で起きた労働災害の95%が協力企業の労働者の身に発生した。「発電所は危険なところなので、労災が多く発生する」と言うのは間違いだ。誰も下請け労働者の危険に責任を負わないために、安全事故が下請け労働者に集中する構造だ。

-調査をしながら涙を流したことはあるか。

=初めから心に固く決めていたのでそんなことはなかったが…故キム・ヨンギュン氏の母親を訪ねた時が一番胸が痛かった。そして調査を終える頃に、キム・ヨンギュン氏が自転車に乗っている写真を見たが…「あの青年はいわれたとおりにしただけなのに死んだ。本人が何らかの義務に違反したのでもなく、いわれたとおりにした最も誠実な人が死んだ」という思いがオーバーラップして、急に胸が詰まった。今後こういうことが起こらないようにするためには、危険を構造化し増幅させる元請け・下請けの序列構造をなくさなければならない。

ソン・ダムン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:8/20(火) 16:31
ハンギョレ新聞

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