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脊髄損傷でも車イスや寝たきりにならない 再生医療の最前線

8/21(水) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 事故やスポーツなどで脊髄を損傷すると「治らない」といわれてきた。しかし現在、「治る」可能性が出てきた。治療の最前線を、千葉大学医学部付属病院整形外科の古矢丈雄医師に聞いた。

■札幌医科大が昨年保険承認

 脊髄を損傷すると、車イスや寝たきりの生活を余儀なくされる――。それが大きく変わろうとしている。脊髄そのものに治療を行う再生医療の研究が進んでいるのだ。

「1980年代後半から脊髄再生の基礎研究が盛んになり、条件が整えば再生可能と分かってきた。千葉大でも基礎研究から10年以上かけて安全性や効果を確認してきた薬の治験を、現在行っています。向こう1~2年で、薬事承認される可能性のある脊髄損傷の治療がいくつか登場してくるでしょう」

 昨年末、先陣を切って承認されたのが、札幌医科大学が医療メーカー「ニプロ」と共同開発した「ステミラック」だ。同病院のホームページによると、「骨髄液に0.1%程度含まれる間葉系幹細胞を培養することによって製造する再生医療等製品」。2~3週間かけて1万倍に培養した間葉系幹細胞を、脊髄損傷後6週前後の患者に点滴静注する。

 たまたま札幌医大に救急搬送されたというケースもあるだろうが、多くは医師が「この患者は札幌医大の脊髄損傷の治療を受ける基準に該当している」と判断し、札幌医大にコンタクトを取るケースだろう。

 培養に時間がかかるため、脊髄損傷を受傷してから2週間以内を目安に札幌医大への入院(転院)が必要。

「患者さん自身の細胞(自家細胞)を使っており、移植細胞の拒絶反応が生じないことが利点です。欠点としては培養期間が必要なため、すぐにでも投与したい脊髄損傷急性期において、投与まで少し時間がかかることです」

 脊髄損傷の再生医療には、①細胞を使うか薬を使うか②細胞を使うなら札幌医大のように自家細胞を使うか、または他人から製造した細胞を使うか③細胞を移植するなら札幌医大のように点滴で行うか、または脊髄に直接移植するか。最新のリハビリ治療を組み合わせるか。今後考え得る治療戦略はさまざまだ。

■まずは急性期の患者の治療を確立

 他人のiPS細胞からつくった神経のもとになる細胞を患者の脊髄に直接移植する世界初の治験計画が厚労省に了承されたのが、慶応義塾大学の研究チーム。脊髄損傷から2~4週間が経過し、運動および感覚が麻痺した患者が対象。今年秋からスタートする。1年かけて4例を組み入れ安全性や効果を確かめる。

「慶応大では、脊髄損傷間もない患者さんにHGFという栄養因子を投与する治験も行っており、これはすでに終了。恐らく審査後、HGFを用いた治療も近く臨床現場での使用ができるようになる。脊髄損傷患者さんの治療選択肢がまた一つ増えることになるのではないでしょうか」

 この治験については、患者の約半数で改善が見られたという研究結果が、今年3月の日本再生医療学会で発表済みだ。

 脊髄損傷には、損傷を起こしてそれほど時間が経っていない急性期・亜急性期と、時間の経過した慢性期とがある。今、行われている研究のほとんどが、急性期または亜急性期の脊髄損傷を対象としたもの。

「もともと治らないといわれていた脊髄損傷で、まずは急性期の患者に対する治療を確立する。慢性期への臨床応用はその後となるが、慢性期に関しても、全く両足が動かなかった患者に脊髄電気刺激を併用したリハビリを行い、歩行再獲得に至ったという驚くべき研究結果も海外から発表されています」

 慢性期も急性期と同様に、“この先”に希望を持てる時代がやってきた。

最終更新:8/21(水) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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