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バントは成功率の少ない戦術 星稜vs智辯和歌山から考えるタイブレークの戦い方

8/21(水) 19:08配信

高校野球ドットコム

タイブレークの場面でバントは必要なのか

 今年夏の甲子園大会で延長13回以降に行われるタイブレークは1試合あった。3回戦の星稜対智辯和歌山戦で、13回はお互い0点で勝負はつかず、14回裏に星稜の6番福本 陽生(3年)がサヨナラ3ランを放ち、智辯和歌山を突き放した。甲子園大会で最初にタイブレークが採用された18年夏の佐久長聖対旭川大高でも13回は0点でお互い譲らず、14回表に佐久長聖が1点を挙げて、逃げ切った。ちなみに、甲子園大会のタイブレークは延長12回まで同点だった場合、13回から無死一、二塁の局面からゲームは行われ、前のイニングから継続する打順の選手が打席に立つ。

 社会人野球では03年から採用され、現在は11回まで同点だった場合、12回からタイブレークが採用される。与えられる局面は高校野球が無死一、二塁なのに対し、社会人野球は1死満塁で、打席はチームが選べる任意打順である。

 これらの違いからか社会人野球はタイブレークになった瞬間に点が入ることが多い。先に断っておくが、今の社会人野球はあまり得点が入らない。それが1死満塁になると、私の見た印象では1、2点入るのではなく、3点以上入ることが多い。表の攻撃のチームが1、2点取っても「これで決まった」という空気にはならない。2、3点入るのが当たり前なので、スクイズをやって1点取るという作戦が立てづらい。1アウト失って1点取っても、2点以上取られる可能性が高いので、バントより強打、強打の応酬が繰り広げられる。

 高校野球はどうかと言うと、この星稜対智辯和歌山戦では13回も14回も先頭の打者はバントをしている。それも両校のバントはともに三塁送球アウトで一、二塁のままだった。タイブレークで得点が入らない原因がバントなのかどうか、検証する件数が少ないので答えが出ていないが、バントは成功率の少ない戦術であることは間違いない。

 私はバントが失われていく戦術であると思っている。成功率の低さとともに、攻撃的精神を委縮させる戦術、というのが私の意見である。ただ、バントは日本の高校野球に深く根を降ろしているのも確かである。2回戦の中京学院大中京対北照戦では1対4でリードされた8回表、北照は無死一塁の場面で2番打者がバントをしているのである。結果は3対4まで追い上げているので一定の戦果はあったわけだが、勝ってはいない。

 ホームランも同じことである。私が考える攻撃的精神の第一は好球必打。ホームランを打ったときのボールカウントを調べてみると、それがよくわかる。準決勝までの47本のホームランのうちストライクの見逃しが2つあったのは8月17日に竹花 裕人(鶴岡東・3年)が放った大会通算37号、8月18日に内山 壮真(星稜・2年)が放った44号、平泉 遼馬(関東一・3年)が放った46号、8月20日に来田 涼斗(明石商・2年)が放った47号の4本だけ。

 ストライクの見逃しが1つあったあとのホームランは13本、つまりストライクの見逃しが1つもなかったホームランは30本あった。そのうちの17本がファーストストライクを捉えたものである。攻撃側のあらゆるプレーの中で最も価値のあるのはホームラン。それは「初球から甘い球は逃さない」という攻撃的精神によってもたらされるということがよくわかる。たとえば「狙い球を絞って」と指示されたら、狙い球以外の甘い球を振らない可能性がある。そういう指示が現在の高校野球の世界では少なくなっているということだろう。

 技術的にはメジャーリーグ発の「フライボール革命」の影響を受けて、アッパースイングが多く見られるようになっているが、右から左に吹く強い浜風に乗れない右打者の打球が散見できた。アッパースイングによって打球にラインドライブがかかっていることが風に乗れない原因だろう。ダウンスイングと言うと、まき割りのようなダイコン斬りを想起される方がいると思うが、浅い軌道の縦スイング(バットが上から出て、レベルスイングの軌道でボールを捉える)が最も打球に角度がつく打ち方である。今大会飛び出した多くのホームランもそういう打ち方によって生み出されている。

 タイブレークが甲子園大会に導入されたのは昨年からだからまだデータが揃わないが、無死一、二塁の場面から判で押したようにバントで送り、1死に、三塁にしようとする作戦は、バントが失敗の確率の高い戦術であることを考えれば有効とは言えない。バントが極端に少ない作新学院ならタイブレークでどのような戦術を取ってくるのか機会があれば是非見てみたい。

小関 順二

最終更新:8/21(水) 21:38
高校野球ドットコム

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