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ありふれた元素で熱電発電、5℃の温度差でもIoT機器が動く

8/22(木) 10:40配信

MONOist

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、物質・材料研究機構、アイシン精機と茨城大学は2019年8月21日、汎用元素のみで構成する熱電発電モジュールを世界で初めて開発したと発表した。低温熱源で発電可能な熱電変換モジュールのコスト削減などが期待できる。5℃程度の微小温度差でも自律駆動が可能なIoT(モノのインターネット)機器の実現につながりそうだ。

新材料と従来材料の比較(クリックで拡大) 出典:NEDO

 センサーを代表として、IoT機器の社会実装が爆発的に進むと予想される。これら機器の電源は一般的に一次電池や太陽電池などを採用しているが、電池交換の手間や恒常的な電力供給の面で課題があった。そこで、室温から200℃までの未利用熱で発電可能な低温熱電発電モジュールに注目が集まっている。既に市販されている低温熱電発電素子としては、ビスマス・テルル(Bi2Te3)系材料が知られるが、ビスマスとテルルのどちらも希少元素であることやテルルの毒性により、社会に広く実装する機器の電源として環境調和性に懸念があった。また、対酸化性や機械的強度の面でも改善が求められていたという。

 そこで、同研究グループは地球の地殻上で2~4番目に存在量が多いシリコン、アルミニウム、鉄を熱電素子の材料とする研究を2018年度から開始。研究開始から約1年で、環境調和性と発電出力が高い新材料(Al2Fe3Si3)の発見と新材料による熱電発電モジュールの開発、モジュールを電源としたIoT機器の開発に成功した。新材料は機械学習やマテリアルズインフォマティクスなどを活用して探索され、アルミニウムとシリコンの組成調整のみでpn制御が可能だ。5℃の温度差によって85μW/cm2の電力を発電する。また、対酸化性や硬さ、破壊靭性値をビスマス・テルル系材料から大幅に向上させたとする。

 材料開発を主に担当した物質・材料研究機構 熱電材料グループ 主任研究員の高際良樹氏は、今回の成果について「(研究期間が)わずか1年以内とスピード感のある研究ができた。地殻存在量の2~4位の元素で構成しているのが最大のメリットで、(ビスマス・テルル系材料と比較して)材料費を5分の1以下にするコストダウン効果がある。また、新材料は安全かつ無害な物質であるため社会実装を拡大する面でもメリットがある」と解説した。

 また、新材料のモジュール化はアイシン精機の登別事業所が担当。同事業所が持つビスマス・テルル系冷却用ペルチェ素子の製造技術を応用することで、量産ラインでのモジュール化を短時間で成功させた。

 成果発表の記者会見では、新材料の熱電発電モジュールと温湿度センサー、BLE通信モジュール、キャパシターを組み合わせたIoT機器を披露。機器を手のひらで触れることで、タブレット端末に温湿度データが送信されるデモなどを紹介した。

 同事業は2020年5月まで実施される予定で、「発電出力100μW/cm2を目指す」(高際氏)など引き続き高性能化に向けて研究が進められる。現時点では実用化時期は未定とし、協業を含めてニーズの発掘を狙う構えだ。

MONOist

最終更新:8/22(木) 10:40
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