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「ここを学べ」「ここを見ろ」とは言わない。ジャニー喜多川の“欲を引き出す”教育手法

8/22(木) 12:01配信

新R25

数多くの男性アイドルグループを生み出すジャニーズ事務所。

創業者のジャニー喜多川さんがプロデュースしたタレントたちは、アイドルとしてはもちろん、映画やドラマなどで輝きを放ち、日本のエンタメを牽引する存在となっています。

ジャニーズに魅せられた「元祖ジャニヲタ男子」の霜田明寛さんは、著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)のなかで、ジャニーズ事務所について以下のように語っています。

「ジャニー喜多川とジャニーズJr.たちの関係を見ていくと、育成者としてのジャニー喜多川の偉大さと、彼が作った人を成長させる仕組みの強さが見えてきます」

霜田さんが分析する、日本を代表するアイドルを生み出してきたジャニー喜多川さんの採用力や育成力とは? 同書のなかから、抜粋してお届けします。

引き出す教育「ジャニイズム」

選抜時には「やる気があって、人間的にすばらしければ、誰でもいい」とはいえ、長く一緒にやっていく中ではもちろん、教育も必要です。

はたしてジャニー喜多川は、どういう指導をするのでしょうか―。

TOKIOの城島茂が「ジャニーズの養成所というのは、一般常識も含めて、いちいち教えてくれるという場所でもない(*1)」国分太一が「事務所の方針が『とにかく現場で学んでこい』『自分で発見してこい』だから(*2)」と語るように、確立された研修プログラムなどがあるわけではないようです。

ジャニーは直接何かを具体的に教えるのではなく、色々な優れたエンターテインメントを見せる、という形で指導をするようです。

それも若い有望なジュニアたちをラスベガスやブロードウェイなど海外のショーやミュージカルに連れて行く、ということまでしています。

ジャニー喜多川は1931年、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。学生時代は音楽専攻で「あの頃の名作ミュージカルは120%見ているという自信がありますよ(*3)」と語るほど。

自身のエンターテインメントのルーツでもある海外のショーをジュニアたちにも見せるわけですが、そのときジャニー喜多川は「ここを学べ」「ここを見ろ」といったことは言いません。

それについて滝沢秀明は「それぞれの感性で学びなさいってスタンス」「“ここがすごいんだよ”って言ったら、みんなそこしか見なくなっちゃうから。そしたら、同じようにしか成長しないでしょ(*4)」と分析しています。

つまり、環境は与えるけれども、あとは基本は放任。それが、少年たちの感性を伸ばすのに選んだスタンスだったのです。

1980年代のはじめ、まだ一般的にビデオが普及していない時代から、合宿所には、アメリカから取り寄せられたマイケル・ジャクソンのビデオなどが膨大に置いてあり、誰でもいつでも自由に見ることができたそうです。

例えば、東山紀之は、そこで食い入るようにビデオを見続け、エンターテインメントの醍醐味に気づいていきます(*5)。

ジャニーズには、事務所に入るまではスポーツにしか興味がなく、ダンスなんてやったこともなかった、という少年も多くいます。

ただ、そんな彼らも、こうしてジャニー喜多川によってエンターテインメントに触れる機会を与えられることで、その魅力に気づいていくのです。

少年隊の錦織一清はジャニー喜多川とのレッスンの日々を振り返りこう語ります。

「とにかく行ったら、楽しい気持ちにさせてくれるんです。そのうちにショウビジネスの世界は楽しいんだよという風に教えてくれる人なんです。この世界でやっていく欲を叩き込むのじゃなくて、引きだしてくれるんです(*6)」

こうしたジャニー喜多川の教育姿勢を、滝沢秀明は「ジャニイズム」と表現します。

「ジャニーズの場合は、ジャニーさんが、きっかけを作ってくれて、あとは自分のことは自分で磨いていくというか。だから、ジャニイズムは人の数だけある。(中略)みんなちがっていいし、だからこそバラバラな個性がグループになったらおもしろくなったりもする(*4)」

こういった教育のせいか、ジャニーズには「出る側になりたい」「目立ちたい」というよりも「エンターテインメントの世界を作りたい」と考えるタレントが多いのも特徴です。

実際に堂本光一や滝沢秀明のように、自らも演出をするようになる者もいます。

また、岡田准一のように撮影やアクションまで担当したり、中島健人のように「ドラマと映画をプロデュースをしてみたい(*7)」と言ったりと、出る側として成功しても、作る側・スタッフ志向のメンバーが出てくるのは、こうしたジャニー喜多川の指導スタンスのせいなのかもしれません。

ジャニー自身もこう語っています。

「僕はタレントをアーティスト、芸術家として捉えていますよ(*3)」

タレントを信頼しているジャニー喜多川は、自分の死後も彼らはやっていけると断言しています。

「うちのアーチストは自分でマネージャー業もやっているわけですよ。最初は付き人もほとんど付けない。だから、もし僕がそういう形になっても、自分たちでちゃんとマネージングできるように育てているんです(*8)」

「マネージャーなしで、自分でやれる人間ばっかりなんですよ。まだ、ボクがいるから、遠慮してるとこ、あると思う。ボクいなかったら、それこそ大活躍できるんじゃないかなあ。だから、ボクが知らん顔して消えちゃったとしても、十分できますよ(*9)」

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最終更新:8/22(木) 12:01
新R25

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