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れいわ新選組の大成功、次の手は

8/22(木) 12:05配信

ニュースソクラ

【小塚かおるの政治メモ】次期衆院選の100人擁立で野党に刺激を

 参院選の比例で2議席、220万票を獲得し、旋風を巻き起こした「れいわ新選組」。

 その代表を務める山本太郎氏が経済政策を前面に掲げていること、訴えの筆頭が消費税廃止であり、「消費税は強制的な物価上昇。デフレの時代に間違った政策だ。増税するなら金持ちから取るべきで、法人税や所得税の累進課税を強化する。

 もう1つの方法は新規国債の発行。国は国民への投資が足りない」と主張していることを6月にソクラに書いた(「なぜ野党は敗れ続けるのか 山本太郎人気に透ける、経済政策の不作」)。

 他に打ち出した政策は、最低賃金1500円、奨学金徳政令(返済免除)など社会問題化する喫緊の課題にズバッと直球を投げ込むもので、「生活が苦しいのは自己責任じゃない」「忖度と言うなら、(政府は)この国に生きる人々をあまりにも慮らなすぎた」「あなたは生きているだけで価値ある存在」という演説は、生きづらさを感じている人々の共感を得たと言える。

 山本氏がこうした主張に行きついたのは、参議院議員として1期働いた結果だろう。山本氏は6年間でいかに「進化」したのか。

 高校時代に「天才・たけしの元気が出るテレビ」への出演を機に芸能界入り。その後、俳優として活躍していた山本氏は、2011年の東日本大震災後、反原発運動を始め、政治家への転身を図る。

 2012年12月の衆院選に東京8区から出馬し、直前まで自民党幹事長だった石原伸晃氏相手に7万票超を集めたものの落選。翌2013年7月の参院選の東京選挙区で66万票を獲得し、初当選を果たした。永田町政界は驚いたものの「知名度の高いタレント候補」という程度の認識だった。

 一般に最も記憶されているのは、「天皇(現在の上皇)へのお手紙事件」だろう。2013年の秋の園遊会に出席した際、天皇に直接文書を手渡し、問題となったのだ。

 山本氏は「原発事故の現状を訴えたかった」と話していたが、この一件で世間には「非常識な国会議員」という印象が植え付けられた。

 ところが、「無所属のはぐれガラス」だった山本氏は、2014年の衆院選後、小沢一郎代表の「生活の党」(当時)に入党、共同代表となる。生活の党が政党要件を失っていたことから「政党要件を得るための数合わせ」と冷ややかな見方をされ、山本氏入党に伴って変更された「生活の党と山本太郎となかまたち」という長すぎる党名も揶揄されたが、この決断こそが山本氏を進化させたと私は見ている。

 当時、山本氏は自身の公式ブログに次のように書いている。
〈今日、永田町で山本太郎、と言う野良犬が保護されました。いつ殺処分されるか判らない状態の野良犬を保護したのは、小沢一郎さん〉
〈一人でやれる事、やれない事、この1年半の議員生活でよく理解しました〉
〈普段、委員会で質問している様な内容をNHKの国会中継や討論番組、政党に所属する事で手に入る内閣委員会以外への参加、などでもぶつけていきたい。圧倒的に活動の場が広がるチャンスです〉
〈全国の市民の力を結集できるような政党を作れるよう、新党の先輩方から、魑魅魍魎だらけの永田町での泳ぎ方を学ばせて戴きながら、全国を飛び廻ります〉
 
 数があってこその国会活動は1人でやれることが少ない。希望する委員会に所属できず、あてがわれるのは残りものになりがち。質問時間も短い。与野党の攻防で国会審議が止まったりしても、その後の展開がどうなりそうかなどの情報はなかなか入ってこない。

 加えて、政治を変えたいのなら、まずは「郷に入りては郷に従え」だ。永田町の古い慣習にどっぷり浸かってみてこそ、一般社会の常識との乖離や必要な改革を見い出すことができる。

 小政党とはいえ、永田町の酸いも甘いも知る小沢一郎氏の傍で、権力闘争への執念をも学んだことだろう。

 その結果、山本氏は2017年1月25日の参院本会議で初めて代表質問に立ち、自らの考えを安倍首相に直接ぶつけることができた。

 一方で、山本氏は他の一般的な新人議員のように「永田町」には染まらなかった。月平均1回ペースで、東京だけでなく全国にも出向いて、定期的な「街頭記者会見」を続けた。

 記者会見だから、ただ演説するだけではない。モニター画面を使って政策を分かりやすく説明した後、質問時間をたっぷり取る。街頭だから集まるのは記者だけではない。

 一般の有権者も同じように山本氏に質問を投げかける。批判やヤジも飛ぶ。それがほぼ毎回2時間ほど行われる。そうした厳しい環境に身を置くことで「答える力」を磨き、政策を磨いた。

 同時に、世論がいま何を求めているのか、何に困っているのか、を肌で感じ取ったのだろう。

 今回の参院選の最中に山本氏をインタビューした際、「みんな政治どころじゃないんですよ。『立憲主義に基づいた政治を行う』っていくら訴えても、多くの人はそれどころじゃない。生活が本当に苦しくて、目の前のことで精いっぱいという声をたくさん聞いてきました」と話していた。

 国会に張り付いて、机上で政策を作る「エリート議員」と山本氏が違うのは、真に大衆の中に入って、そこから吸い上げた現実を政治に反映させようとしているからなのではないか。

 参院選後、小沢一郎氏に「れいわ」旋風をどう見たか聞いてみると、予想外の冷静な答えが返ってきた。

 「世間は移り気。マスコミもそうだ。1人や2人が議席を取ったからって、何もできない。多数を取らなきゃ、どんな主張も実現できない。みんな『れいわ、れいわ』って言うけれど、野党結集の触媒や中心になることはない。まずは独自路線でどこまでやれるか、やってみたらいい」

 独り立ちした今、その実力が試されているということだろう。

 山本氏はれいわを「政治に緊張感を生む、野党にガチンコ勝負を促す存在」にしたいようだ。来たる衆院選に「独自候補を100人擁立する」として、他の野党にも共闘を呼びかけ「政権を取りに行く」と言っているが、さて、山本氏のさらなる進化は――。

■小塚かおる(日刊現代ニュース編集部長)
1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て、2002年から「日刊ゲンダイ」記者。その間、24年に渡って一貫して政治を担当。著書に『小沢一郎の権力論』、共著に『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』などがある。

最終更新:8/23(金) 6:27
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