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【トリチウム水処分】さらに負担強いるのか(8月23日)

8/23(金) 10:12配信

福島民報

 東京電力福島第一原発構内にたまり続けている放射性物質トリチウムを含んだ処理水の処分方法を検討している政府の小委員会が長期保管についての議論を始めた。長期保管は問題の先送りでしかない。下手をすれば、放射性廃棄物全般の固定化にもつながりかねない。一日も早い原状回復を願う被災地にさらなる負担を強いるつもりなのか。

 トリチウム水の処分を巡っては、政府の作業部会が二〇一六(平成二十八)年にまとめた報告書で地層注入、海洋放出などの五つの選択肢を示し、小委員会で議論を重ねてきた。原子力規制委員会の更田豊志委員長は「海洋放出が唯一の方法」としているが、昨年八月の公聴会で長期保管を求める意見が相次ぎ、小委員会も対応せざるを得なくなったようだ。

 しかし、長期保管は処分方法とはなり得ない。トリチウム水はいずれ何らかの形で処分しなければならないし、どのような方法を選択するにしても現在、懸念されている風評被害が起きないという保証はない。逆に長期保管することによって「処分できない水」との誤った認識が一般化し、問題の解決を今以上に難しくする恐れもある。処分方法を決められずにいる政府に先送りの口実を与えるだけだ。

 もちろん、さまざまな懸念が指摘される中、科学的、経済的合理性だけで処分に踏み切るのはあまりに乱暴だ。まずはトリチウムやトリチウム水に関する基本的な知見、国内外の原発などにおける処分方法と基準、環境への影響の有無などを丁寧に周知する必要がある。その上で福島第一原発における処分が社会に与える影響と今後の見通し、悪影響が生じた場合の対策をセットで示し、国民に理解を求めていかねばなるまい。

 中間貯蔵施設に運び込まれている県内の除染土壌などは搬入開始から三十年以内に県外で最終処分されることになっているが、具体的な見通しは立っていない。廃炉が決まった東京電力福島第二原発の使用済み燃料も行き場が決まらぬまま敷地内に一時保管されることになった。いずれも受け入れ先や処分方法がすんなり決まるとは思えない。

 トリチウム水の処分を巡る議論はこれらの放射性廃棄物の行方にも影響するだろう。議論がまとまらなければ「長期保管」の名の下に延々と廃棄物を現場に留め置く。それはとりもなおさず「最終処分」にほかならないのではないか。難しい判断を先送りする政府のツケを被災地に払わせるようなやり方は決して許されない。(早川 正也)

最終更新:8/23(金) 10:12
福島民報

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