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【沈黙をこえて】言い聞かせてきた「見過ごすことが大人」 国会議員からのセクハラ、容認する報道現場

8/23(金) 14:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

 財務事務次官による女性記者へのセクシュアルハラスメントが発覚した2018年、わが身を省みたマスコミ関係者は少なくない。テレビ局で働く鈴木京子さん(仮名)もその1人。これまで性被害を受けながらも「見過ごすことが大人のルール」と言い聞かせてきたが、もう黙らないとの意を強くしている。記者ではなく「女」であることを求められる報道現場。メディア業界で働く女性の現実を見つめていく。

議員に関係迫られ

 2000年代半ばにテレビ局で働き始めてから数年後、鈴木さんは政治部に異動し、当時の主要政党を担当した。

 日中はなかなか向けられない話でも酒の席では雑談を交えながら聞き、情報を手にできる。他の記者と同じく、国会議員と飲みに行くことは鈴木さんにとっても取材の一環だった。

 相手は9割強が男性。当初は2人きりになることに不安を覚え、他社の記者と一緒に複数人で飲むことが多かったという。

 「政治部は、公務先などで複数の記者と議員を囲む取材が多い。他社と協力体制を築いておかないと、情報が回ってこなくて取材に参加できず、結果、ニュースを落とす、ということが起きかねない。男性記者の中には『女だからネタを取れる』と陰口を口にする人もいたので、恩を売るではないけれど、日頃から議員との飲み会に誘うなどしていたんです」

 ただ、仕事にも慣れ、警戒心が薄らぐと、一対一での飲み会が自然と増えた。鈴木さんはあくまでも取材という意識だったが、相手はそうではなかった。

 ある議員とバーで飲んでいたときだった。仕事の会話の途中で卑わいな話題を振られた。

 「彼氏とエッチしているのか」

 笑ってごまかすと、なおも続けて、こう言った。

 「俺とやらない? やらないと相性って分からないんだよ。一度やってみようよ」

 議員は既婚者だったが、冗談を言っているふうではなかった。バーから宿舎は近い。その場の雰囲気を壊すと、情報をもらえなくなるという怖さもあった。とりあえず、笑ってその場をやり過ごした。

 その後もしつこく食事に誘われたが、断り続けると、何事もなかったかのように声を掛けられなくなった。一方、新たに配属された女性記者を誘う議員の姿を何度も目にした。

 「それはそれで苦しかったです。女性同士で競わされている、というか…。宴席ではお酌して、何を言われても笑顔で、そういう女性になれないなら記者失格と言われているような気がして、すごくつらかった」

 仲間内では、女性記者がかつて政治家との懇親会に水着で参加したことが武勇伝のように語られていた。誰かに相談できるような環境はなかった。

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最終更新:8/23(金) 14:00
カナロコ by 神奈川新聞

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