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【沈黙をこえて】言い聞かせてきた「見過ごすことが大人」 国会議員からのセクハラ、容認する報道現場

8/23(金) 14:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

仕事で評価されず

 なぜ被害を訴えなかったのかと言われれば、その通りかもしれない。だが、そもそも声を上げられる土壌などなかった。

 以前いた番組の制作現場ではほぼ毎日、男性の先輩から尻を触られた。

 社内の飲み会があった店では、その先輩に背後から抱きしめられ、下半身を押し付けられた。助けを求めたくても、ショックと恐怖で体が固まって声を出せなかった。

 偶然、通り掛かった同僚の男性は冷やかすようなそぶりを見せた。後日、男性社員たちは「鈴木が襲われていた」と笑いながら話していた。

 政治部記者時代、先輩記者から「お前、あの議員と仲良しだからネタを取れるだろう」と情報の裏取りを求められ、実際に情報をつかんだときも「お前はあの議員の『お気に入り』だからな」と茶化された。しまいには「あの議員は女性に甘いんだからうまくやれよ」と言われた。

 「振り返ってみると、記者として仕事の中身を評価されたことがなかった」

 記者ではなく「女」であることを求められ、成果を上げても「女」であることを理由にされた。

報じる側の問題

 そんな社内の体質は日々の仕事でも痛感した。鈴木さんが、未就学児が通う施設について取り上げる企画書をまとめたときのことだ。

 当時、施設の在り方を巡っては省庁の縦割りが問題視され、企画はその弊害を指摘するものだったが、番組制作を取り仕切る男性上司からは難色を示された。了承は得たが「少子化問題」を絡めるとの条件付きだった。

 少子化の時代、女性は子どもをたくさん産まないといけない。だから、この問題を真剣に考える必要がある―。省益などを巡る対立を描くつもりが、そんな構成を求められた。

 「あっけにとられました。なぜ、少子化対策に結び付けないと子育て環境に関する行政の問題は伝えられないのだろう、と。かつて、ある大臣が『女性は子どもを産む機械』と発言しましたが、根底にある認識は同じなのでは、と」

 番組制作の現場では、女性は全体の1~2割で、どうしてもその声は小さくなってしまう。

 「問題を正面から取り上げて放送しないから、視聴者にも届かない。発信していないから世の中が変わるきっかけを作り出せない。結局、男性社会を容認しているメディアにこそ問題の根本があるんだと、私たちの罪深さを実感しました」

 企画は日の目を見たものの、胸には釈然としないものが残った。

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最終更新:8/23(金) 14:00
カナロコ by 神奈川新聞

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