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記者が裁判員になって考えたこと 人が人を裁く重み

8/24(土) 14:52配信

47NEWS

 裁判員裁判の開始から10年。普段、記者として傍聴席で取材することが多いが、法廷の内側からはどんな光景が見えるのだろうか。昨年10~11月、高松地裁で開かれた裁判員裁判に、補充裁判員として参加する機会があった。遺族の処罰感情に揺さぶられる一方、刑の公平性も考えた。刑罰について初めてわが事として考えた体験だった。

(共同通信=佐藤萌、当時高松支局員、信濃毎日新聞に出向中)

 おととし11月、自宅にある書類が届いた。送り主は「最高裁判所」。びっくりして封を開けると、私が裁判員候補者名簿に1年間記載されるとのお知らせだった。

 その後、事件ごとの抽せんで「裁判員等選任手続き」に呼び出され、昨年10月末に30人ほどが地裁の一室に集まった。この中から裁判員6人と補充裁判員2人が選ばれる。交際相手の女性をカラオケ店の駐車場で殴り、死亡させた男性被告の傷害致死事件について扱うという。説明を終え、結果が前のスクリーンに映された。補充の2番に私の番号があった。

 「まさか」。驚いている間に別室に通され、事件を担当する裁判官、弁護士、検察官と顔合わせ。選ばれた、互いに面識のない8人で、公正に職務を行うとする宣誓書を、声をそろえて読み上げた。

 翌週の月曜日、公判が始まった。「見て聞いてわかる裁判を目指している。気構えず望んで」と裁判官はにこやかだ。入廷の仕方を一度練習しただけ。あっという間に審理が始まった。

 普段、取材で傍聴席に座っている時は、最後に奥の高い扉から登場する裁判官らはやや威圧的に見えていた。ただ自分がその扉から入廷すると、思ったより高さは感じられない。見上げられている感覚もあまりなかった。補充裁判員の私は、裁判官と裁判員の一歩後ろに着席した。意外に後ろからも、傍聴席の奥までよく見渡せた。検察官も弁護人もこちらを見ているので、すべての人の表情がよく分かった。

 被告が証言台の前に呼ばれた。弁護人の隣から歩み出た、白シャツに紺のネクタイを締めた少し髪の長い男性被告。きれいな身なりで、拘束されていなかった。「この人が被告人か」。多くの視線が集まる法廷の中央で、被告が名乗る声が震えていた。見ているだけで緊張した。

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最終更新:8/24(土) 17:19
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