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死亡者は85年の2倍に がん検診の"適齢期"は75歳まで

8/24(土) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【Dr.中川のみんなで越えるがんの壁】

 この連載や講演などでは、がん検診の重要性について語っていますが、がん検診は「スクリーニング検査」で健康な人の中から、がんが疑われる人をすくい上げて、精密検査に誘導するのが狙いです。100%の精度ではありませんが、それでも胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頚がんの5つは医学的に検診の有効性が知られています。

 では、がん検診は何歳まで受けるべきでしょうか。結論からいうと、ひとつの目安が75歳です。

 がんは死因のトップで、年間37万を超える命が奪われています。実に1985年の2倍。がんは遺伝子の劣化といえる病気で、高齢社会の今、がんで亡くなる人が増えるのは当然でしょう。

 年代別に見ると、がんが死因になるのは、20代は1割ほどで、加齢とともに上昇し、男性は65~69歳がピーク。この世代の男性は、半数弱ががんで亡くなります。女性は55~59歳がピークで、死因の6割近い。女性の方が若くにピークを迎えるのは、乳がんは40代後半、子宮頚がんは30代に最も多いためです。

■乳がん家族歴アリは30歳から超音波検査を

 そこで、がん検診の適齢期を考えると、まず子宮頚がんは20歳から、そのほかのがんは40歳から受けるのがセオリーでしょう。

 具体的に見ると、乳がんで家族歴がある人は、30歳から超音波検査を受けるといい。一般にX線によるマンモグラフィーが推奨されますが、日本人女性はマンモで判別が難しいデンスブレストが多く、そのタイプは超音波の方が見つけやすいのです。大腸がんも家族歴のある人は30歳から便潜血検査を受けるといいでしょう。

 先ほど示したピークの年齢から65~70歳を越えると、がんで亡くなる割合は減っていきます。100歳以上になると、1割未満。心臓病や脳卒中、肺炎などが増えるのです。

 がんで亡くなるのは、中年から70歳前後まで。イメージとしては、働き盛りの命を奪う病気で、家族へのダメージも大きいでしょう。振り返ると、私の義理の妹も48歳で大腸がんで亡くなりました。50歳の死亡と100歳の死亡とでは、家族に与える心理的な影響は全く違うでしょう。

 そんな悲劇を免れるための検診ががん検診。一般論としての上限は、75歳といえるのです。

 たとえば、胃がんのためのバリウム検査は、便秘や腸閉塞などのリスクがあります。高齢で腸の働きが衰えると、そのリスクは増すため、独自に上限を定める自治体も出てきました。長野県伊那市や愛知県田原市などでは、バリウム検査の対象年齢を79歳までと定めています。

 もちろん、検査や治療の適応力は一人一人の体力や病状によっても変わります。一概にはいえませんが、がん検診には“適齢期”があることを頭に入れておいて損はないでしょう。

(中川恵一/東大医学部附属病院放射線科准教授)

最終更新:8/24(土) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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