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「ペルシャ」を敵にすべきではない――ホルムズ海峡の文化地政学

8/24(土) 9:00配信

THE PAGE

 ペルシャ湾とオマーン湾の間にあるホルムズ海峡。今年6月、この近くで日本のタンカーが攻撃を受けました。米国は7月以降、日本など60カ国以上に同海峡の安全確保を目的とする有志連合への参加を呼び掛けていますが、現在のところ、参加表明国はわずかです。

 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は「単純にアメリカ追従という選択肢をとるべきかどうか一考を要する」と語ります。日本の目指すべき方向について、若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。

イランではなくペルシャ

 この数日、マスコミは韓国関係の話題で占められているが、今、日本が直面する大きな選択のひとつは、ペルシャ湾のホルムズ海峡をめぐる「有志連合」への参加、不参加、あるいは参加の仕方である。

 日本とイランは昔から良好な関係とよくいわれるが、それは主として石油化学プラント建設への協力などによって築かれた近代の関係を意味するのであろう。しかし、この国はペルシャと呼んだ方が歴史好きにはピンとくる。イスラム圏であってもアラブ諸国とは一線を画し、古都イスファハンには素晴らしい建築が建ち並ぶ。

 奈良時代、両国はシルクロードによって結ばれていたのだ。日本の仏教は「ペルシャ的仏教」とされ、歴史家でもあった推理作家・松本清張は、ゾロアスター教の影響を強調した。この世界最古の哲人ともいうべき開祖ゾロアスターは19世紀、フリードリッヒ・ニーチェの著作で「ツァラトゥストラ」となって、ヨーロッパ的な神の概念を否定する「超人」として登場するのだから、まさに東洋と西洋を結び、古代と近代を結ぶ、幻想的な思想家である。

 また奈良の正倉院の御物にはペルシャ渡来のものが多く、天皇家とも縁が深いというべきだろう。そのペルシャの海に武力(海上自衛隊)を差し向けることに、僕は深層心理的な抵抗がある。東アジアの安定に関しては日米同盟が基軸であるとしても、それをそのまま中東の海に延長させるのはどうだろうか。少し踏みとどまって考えたい。

 本稿ではこの国をイランとしてではなくペルシャとして、ユーラシアの歴史における文化地政学的な位置づけを考えてみる。ペルシャの文化が東洋と西洋のハザマに位置するという事実は、古代から現代まで変わっていない。そして今回も問われている。日本は東洋なのか西洋なのか。現在、われわれの文化もまたハザマに置かれているのだ。

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最終更新:8/24(土) 9:00
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