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契約書を作らない吉本興業の姿勢は前近代的なやりがい搾取

8/25(日) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【「表と裏」の法律知識】#1

 吉本興業の芸人さんの闇営業問題をきっかけに、芸人さんと吉本興業との間に契約書がなく、ギャラの分配など契約内容が曖昧だということが注目されました。

 芸人さんになることを目指すのであれば、自ら劇場などを複数持ち、知名度もある吉本興業は登竜門でしょう。それゆえ確かに、「吉本興業に入らせてもらって、吉本芸人を名乗らせてもらって、劇場などへの出番の機会ももらっているのだから、契約書などなくてもいい」という考えもあるのかもしれません。

 しかし、この考えは、芸人さんに「吉本芸人としてのやりがい」を強く意識させて、その労働力を不当に安く利用するという「やりがい搾取の土壌」にしかなりません。

 この「やりがい搾取の土壌」の上では、搾取されてきた先輩芸人さんは、後輩芸人が相当なギャラを受け取ることがないように、自分が新人の頃よりも良い環境で仕事ができないように、会社に働きかけたり、後輩芸人にプレッシャーをかけるなどして足を引っ張ります。その結果、(特に売れている)先輩芸人さんに先ほどのような発言をされた後輩芸人さんは何の権利主張もできなくなります。さらに、その後入ってきた新人芸人さんに対して、後輩芸人さんが同様の態度を取り、この状況が繰り返されるという負の螺旋(らせん)に陥ります。そしてこの負の螺旋の結果、吉本興業は何もせずに搾取をし続けられることになります。

 今回のトラブルを経て吉本興業は経営アドバイザリー委員会を設置し、契約内容を見直す方針を打ち出しました。これによって「やりがい搾取の土壌」を取り払えるのかが注目点だと思います。

(髙橋裕樹/弁護士)

最終更新:8/25(日) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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