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グリーン上で“動かない手”に苦しんだ日々 淺井咲希が数々の試練を乗り越え涙の初優勝

8/25(日) 17:20配信

ゴルフ情報ALBA.Net

<CAT Ladies 最終日◇25日◇大箱根カントリークラブ(神奈川県)◇6704ヤード・パー73>

誇らしげに優勝カップを掲げる淺井咲希【写真】

これまでに8人の優勝者を輩出していた黄金世代から、また1人新星が現れた。初日から単独トップを走っていた淺井咲希が、最後までその座を守り切りトータル10アンダーで初優勝。最終ホールでの大ピンチをしのいでの“劇的勝利”に、ラウンド後は大粒の涙を流した。

同組の穴井詩に2打リードで迎えた18番パー5。3打目をピン右5mにつけると、このファーストパットをカップ50cmまで寄せ、あとはウイニングパットを流し込むだけだった。しかし、「手が動かなかった」とこのパーパットはカップに蹴られて2mオーバー。次のボギーパットを外すと、先にパーで上がっていた穴井とのプレーオフに突入とあって、歓喜のムードに包まれていたグリーンは、一瞬にして試練の場に変わった。

「負けたと思いました。感覚的には“ホールアウトできないかも”。負ける流れだなって」。この日感じなかった“弱気”が、ここで一気に心に押し寄せてきた。しかし、キャディからの「強く打ちきれ」という言葉で目を覚ました。「パットで悩んできたこれまでの思いを、すべてこのボギーパットに込めよう」。そう意を決してから、これをねじ込みガッツポーズ。同組の選手や、グリーン脇で待ち構えていてくれた同級生の勝みなみ、大里桃子、高橋彩華と抱き合う時には号泣だった。

“パットで悩んできた日々”は、ゴルフ生命すら脅かすものだった。兵庫県・滝川第二高在学時に出場した団体戦。ここで1mのパーパットを外し、カップで回転したボールが自分の足元に戻ってきた日から「手が動かない」症状が始まったと淺井は振り返る。「ジュニアの試合でも手が動かないし、無理に動かすとパンチが入ってグリーンの外に行ってしまう。ホールアウトできずに、目をつぶってパットを打っていました」。

『女の子だったらプロゴルファーにしたい』。そんな父の願いもあり6歳からゴルフを始めた淺井。父の指導はスパルタだったが、「ゴルフは好きでした。下手だから練習をするのは当たり前」とその期待に応えようとした。中学時代は『兵庫県ジュニアゴルフ選手権』を2度制覇。高校も名門に進み、順調にプロへの道を歩んでいた。グリーン上で手が動かなくなったのは、そんな時だった。中学3年から高校2年までは一度も予選落ちがなかったが、高校3年生の時には、逆に一度も予選を通過できなくなった。「この状態で通用するほどプロは甘くない。プロテストはあきらめて、ゴルフもやめよう」。本気でそう考えた。

「プロになって父の夢をかなえたい」という気持ちは大きく揺らぎ、父に“辞めたい”とも伝えた。しかし『ここまでやってきたんだし、もしダメだったとしても、やれるところまでやろう』という励ましも受け、「1回だけ」の受験を決意。「どうせ1回なら後悔のないように」と、ここからゴルフに没頭した。すると2017年7月の最終プロテストを12位タイで通過。しかし、ここでも目をつぶってカップに流し込む姿は変わらなかった。

昨年から取り組むクロウグリップも、この解消を目指してのもの。今も常に「不安」との戦いは続いている。好発進しても失速する試合が続いたこともあり、「ゴルフが好きじゃない」という思いも頭の片隅にあるという。そんななかつかんだのが、今回の優勝だった。

「(優勝までは)むちゃくちゃ早かったです。今年は賞金シードが目標で、もしQTがダメでも来年ステップ・アップ・ツアーでやればいい、と思っていたくらいでした」。しかし、この1勝で「自分のゴルフでも試合で通用すると感じられた」と大きな自信も得た。「2勝目が難しいと言われるので、早くもう1勝したい」。苦しんだ日々を乗り越えた先に見た大きな光。それが、21歳の今後のゴルフ人生を照らしていく。(文・間宮輝憲)

(撮影:上山敬太)<ゴルフ情報ALBA.Net>

最終更新:8/25(日) 17:20
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