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『ルパンの娘』70~80年代アニメを思わせる絵力の視覚的、聴覚的中毒性

8/25(日) 8:10配信

オリコン

 深田恭子が代々泥棒一家「Lの一族」の娘・三雲華を演じている『ルパンの娘』(フジテレビ系)。視聴率はやや苦戦中とはいえ、評判は上々で、コンフィデンス誌のドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」でも毎週満足度を上昇させる高い評価を得ている。

【写真】深田恭子と田中みな実、泥棒スーツでの格闘アクションを披露

■“コスプレドラマ”先入観による食わず嫌い層も?

 評価の理由には、「くだらなさが好き」「頭を空っぽにして見られる」など、徹底的に振り切ったコメディとしての出来を挙げる声が多い。それもそのはず、同作を手がけているのは、『翔んで埼玉』などの武内英樹監督。大真面目に全力でふざけまくるのはお手の物なのだ。

 しかも、武内監督といえば、実は深キョンの出世作である1998年の『神様、もう少しだけ』(フジテレビ系)の監督でもある。約20年の時を経て、同じ監督がまったく変わらない可憐さを持ち続けている深キョンを撮るというのも、なかなか感慨深い。

 だが、このドラマ、実際に観てみると清々しくおバカでおもしろいのに、SNSやその反響をまとめる記事を中心とした「深キョン可愛すぎ」といった声が大きすぎることで、少々損をしている印象もある。ドラマを観ずに「また深キョンのコスプレドラマね」と判断し、食わず嫌いしている層も、残念ながらそこそこいると思うのだ。

■深キョンの可愛さは「愛すべき狂人たち」に巻き込まれる「普通の人」ぶり

 もちろん深田恭子は可愛い。昼間の顔「図書館司書」も、泥棒スーツもよく似合っている。しかし、本作での深キョンの可愛さは、造形的な面よりもむしろ「愛すべき狂人たち」に巻き込まれる「普通の人」ぶりにある。

 本当は泥棒をしたくないのに、天才的な才能があるという皮肉や、自由奔放な家族の暴走に戸惑いつつも、家族を愛し、生真面目な恋人との板挟みに苦悩する様が描かれている。いつでもキョトンとして可愛い深キョンは、言ってみれば、周囲を包囲するこってり濃厚な役者たちの「捕手」であり「観客」の立場も担っている。

 ダンディですっとぼけた泥棒の父を演じる渡部篤郎や、猛烈な母・小沢真珠、フォルムも声も玩具のようなおもしろ可愛さを放つ祖母・どんぐりをはじめとして、必死の形相で繰り出す迫真の演技は、ほとんど深キョンに向けた「笑ってはいけない」千本ノック状態に見える。

 また、小ネタたっぷり、オマージュたっぷりの遊び心も、毎度話題になるポイントだ。泥棒一家の娘・華と警察一家の息子・和馬(瀬戸康史)との禁じられた恋は、『ロミオとジュリエット』であり、BGMとしてたびたび『ロミオとジュリエット』の曲が流れている。

 また、和馬の『仮面ライダーキバ』(テレビ朝日系)や、小沢真珠の代表作である昼ドラ『牡丹と薔薇』(フジテレビ系)の名シーン、嫉妬に狂って夫の財布を焼く「財布ステーキ」が本作でも登場したり、『カリオストロの城』の名台詞のオマージュや、『オーシャンズ12』のオマージュが飛び出したりと、随所に笑いを散りばめている。

 とはいえ、こうした小ネタやオマージュは、塩梅がかなり難しいもので、ヘタにやればスタッフや出演者だけがウケる内輪ネタになりかねないところもある。その点、本作の場合、役者たちの演技にも演出にも「ドヤ感」がまるでなく、実に真剣に、ときには美しさを感じるほどにやり切っているのだから、好感を抱かざるを得ないだろう。

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最終更新:8/27(火) 4:25
オリコン

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