ここから本文です

社説[ネットデマ被害]拡散させた責任も重い

8/25(日) 8:45配信

沖縄タイムス

 「朝起きたら、犯罪者扱いされていてパニックになった」

 常磐自動車道で起きたあおり運転事件に関連し、ネット上でデマ情報を流された会社経営の女性の言葉である。名前や写真までさらされ、非難の標的となった恐怖はいかばかりか。

 デマの発信は「ネットの暴力」であり許されない。安易な気持ちでリツイートした大勢の人たちも、責任を重く受け止めるべきだ。

 女性はあおり運転事件で逮捕された容疑者と無関係にもかかわらず、ツイッターなどで「同乗していた女」と名指しされた。世間の関心を集めたニュースでもあり、瞬く間に情報が拡散し、誹謗(ひぼう)中傷の書き込みが相次いだ。

 女性の「インスタグラム」を、容疑者とされる人物がフォローし、実際の同乗者と服装などが似ていたことが端緒とみられるが、どれも根拠に欠ける。 

 「犯人扱い」された女性は弁護士とともに記者会見を開き「軽い気持ちでデマを拡散することの怖さをしっかり考えてほしい」と訴えた。 

 今後、情報の発信や拡散に関わった人物を特定した上で、損害賠償請求訴訟や刑事告訴の準備を進めていることも明らかにするなど、毅然(きぜん)とした対応をみせる。

 2年前、東名高速で起きた別のあおり運転事故を巡っても、被告と関わりがあるかのような偽情報に苦しめられた会社社長がいた。

 会社は一時休業を余儀なくされ、経済的損失や精神的苦痛を受けるなどの負担を強いられた。

 ■ ■

 ネットデマは一度世に出ると拡散が繰り返され、取り返しのつかない被害をもたらす。悪意ある投稿は、沖縄でもたびたび問題になってきた。

 2015年の県議会で翁長雄志知事が「長女が中国の外交官と一緒になり、末娘は中国へ留学しているといわれているが、2人とも一度も中国に行ったことがない」と発言する場面があった。

 野党議員の「知事は中国と親しいといわれているが」との質問に対し、広がるデマを否定したのである。

 一昨年、米軍ヘリの窓が落下する事故に見舞われた小学校、部品が落下した保育園も「自作自演だ」「やらせだろう」など言葉の暴力にさらされた。

 沖縄に対しては、フェイク(偽)にヘイト(憎悪)が加わり、悪循環が加速している。

 ■ ■

 全国の法務局が18年に救済手続きを始めたネット上の人権侵害事案は1910件で、前年に次いで過去2番目に多かった。

 書き込みに名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害などの違法性が認められる場合、プロバイダーへ削除を要請することができるが、手口は巧妙化している。裁判所に削除の仮処分命令を申し立てる方法もあるが、中傷された側が声を上げるのはつらくハードルが高い。

 ネットの匿名性や情報発信の容易さを背景にした今の時代の問題である。削除手続きが速やかに進む仕組みの検討を求めたい。

最終更新:8/25(日) 8:45
沖縄タイムス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事