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小説家たちの姿を通して人生の真髄に迫る名作が再演

8/26(月) 17:57配信

チケットぴあ

1980年から1990年代の小劇場ブームを牽引した劇団「自転車キンクリート」の代表作のひとつ、『絢爛とか爛漫とか』。若い4人の小説家の泣き笑いを通して、普遍的な人生の命題を浮き彫りにする名作だ。初演の演出を手がけたのは、同劇団を旗揚げした鈴木裕美。戯曲を深く掘り下げ、活き活きとした人物像を描き出す手腕で、これまでに多くの演劇賞を受賞している。8月20日(火)に幕を開けた今回の公演は、花も実もある若手俳優4人の競演はもちろん、鈴木が1998年の再演以来、21年ぶりに演出を担当する点も話題だ。

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昭和初期の東京。処女作のあと2作目が書けずに悩んでいる小説家・古賀(安西慎太郎)の書斎に、批評家志望のモダンボーイ・泉(鈴木勝大)と、女性賛美の耽美小説家・加藤(川原一馬)、破天荒な小説が注目を集める諸岡(加治将樹)がやってくる。あるダンサーに恋心を募らせる加藤のために、みんなでダンスホールに繰り出そうというのだ。“小説を書かなければ”と焦る古賀に、「人生修業は、すなわち文学修業だ」とうそぶく諸岡。四者四様の文学への想いは、彼らの人生そのものを模索する姿に重なり……。

「カンパニー全員で過ごしてきた時間を信じ、手を取り合い、とにかく楽しんでやっていきたいと思っています」と言う安西は、自意識と現実のはざまで葛藤する古賀を熱演。その姿は小説家という枠を超え、いつの時代にも見られる“何かをしたいのに、何をしたらいいのか分からない”若者像そのものを表わしているかのようだ。批評家として他の3人とは少し異なる立ち位置の泉役・鈴木勝大も、「観劇にいらしてくださる皆様には、舞台上の4人と過去の自分が結び付くような素敵な瞬間がきっとあると思います」とコメント。物事を斜めに見ているかのようで、言葉や表情の端々に誠実さがにじむ泉像を作り出している。

一方、女性賛美が過ぎて、仲間から“エロ・グロ・ナンセンスな小説を書いている”と揶揄される加藤を演じる川原。「部屋に置いてあるものから細かい動作、4人の中で繰り広げられる会話まで、ひとつひとつを楽しんでいただけたら」との言葉通り、端正なたたずまいと丁寧な役づくりで“芸術家の業(ごう)”に説得力が出た。その“作家としてのいずまい”は、加治も同様。豪放磊落ながら、なにげない言葉に作家らしい知性がにじむ諸岡を、自然体で演じている。「四季折々の音や匂いと共に今を懸命に生きる若者の姿をご覧いただき、今作が皆様の明日への活力となれば」というコメントも、本作の魅力を伝えて的確だ。「彼らの息遣いや体温まで感じていただけるような親密な劇場。私の古くて新しい友人たちに、どうぞ会いに来てください」という鈴木裕美の言葉の意味を、劇場でぜひ実感してほしい。

公演は9月13日(金)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERにて。

文:佐藤さくら

最終更新:8/26(月) 17:57
チケットぴあ

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