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日米の「韓国疲れ」はピーク 日米韓協力の構造的限界を突きつけたGSOMIA破棄問題

8/26(月) 11:40配信

FNN.jpプライムオンライン

8月22日、韓国政府が日本との「秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)」を破棄するとの決断に至っ たことは、外交・安全保障にかかわる当局者や専門家に衝撃を与えた。GSOMIA破棄は今後の日本の安全保障にどのような影響を及ぼすのか。それを考えるには、これまでGSOMIAが果たしてきた役割を理解する必要がある。

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軍事情報保護協定の役割

GSOMIAは情報共有枠組みそのものではなく、機微な軍事情報をやりとりする際の「情報保護」に関する取極である。具体的に言えば、「情報を受ける国(受領国)は、情報を提供する国(提供国) の了承なしに当該情報を第三者(国)に提供してはならない」とか、「提供された情報について受領国は提供国と同等の保護措置をとる」といった原則が規定されている。またGSOMIAがあるからと いって、互いの秘密情報が自動的に相手に流れたり、一方が相手の情報に無条件でアクセスできるわけではない。交換する情報の内容については双方の了解が必要で、一次情報にアクセスできるのも秘密軍事情報取扱資格(セキュリティ・クリアランス)を持ち、なおかつ職務上の必要性を有するごく少数に限られる。これらの取極があることにより、両国間では情報漏洩の懸念を相対的に減らし、相互信頼に基づくスムーズな情報協力が可能となる。

例えるなら、GSOMIAは日韓の防衛協力という歯車を円滑に回すための潤滑油のようなものだった。潤滑油がなくても歯車を回せないことはない。しかし、制度に裏打ちされた相互信頼がなく、 情報漏洩のような”故障”のリスクを払拭できない場合、結果として歯車を回すこと自体を躊躇する ようになってしまう。2016年11月に日韓のGSOMIAが締結されるまで、この潤滑油の役割を果たしてきたのは米国であった。日韓両国と同盟を結び、日米韓の三カ国協力を北東アジア安定の柱とする 米国は、早くから日韓GSOMIAの必要性を双方に訴えていたが、政治的障害によりなかなか締結には 至らなかった。日韓両政府は、北朝鮮による核・ミサイル開発の進展や、韓国周辺での軍事的挑発 (哨戒艦「天安」撃沈事案:2010年3月、延坪島砲撃事案:同年11月)が深刻化した2011年頃から、軍事情報共有体制の向上を喫緊の課題としてGSOMIA締結に向けた協議を続けていたが、2012年 6月29日の署名式1時間前という土壇場のタイミングで、韓国側が国内政治への配慮を背景に協定へ の署名を延期したこともあった。

その間の補完措置として2014年12月に交わされたのが、米国を仲介者とする「日米韓三カ国情報 共有取極(TISA)」である。日米韓TISAは、北朝鮮の核・ミサイル関連活動に限定した情報共有枠 組みで、日韓が直接情報をやりとりする代わりに、米国が日韓双方と締結している情報保護協定(= 日米GSOMIA・米韓GSOMIA)に則った保護規則を間接的担保とする形で、日韓の秘密情報の受け渡 しを仲介するという仕組みである。しかし、米国を介してのやりとりは、秘密開示区分の調整や双 方の了承を得る手続きが煩雑となるなど、行政上のコストと迅速性の面で必ずしも使いやすいもの ではない。それゆえ米国は2012年の署名延期以降も、日韓両国にGSOMIAの正式な締結を強く後押し してきた(*当時両国の仲介に関わった米政府関係者は、今回の韓国政府の決定に失望と怒りを禁じ 得ないようであった)。

GSOMIA自体が軍事情報保護のための取極であることからもわかるように、これまで日韓が同協定を通じてやりとりしてきた内容は公開されていないため、それがどの程度の重要性を持つものなのかわかりにくいかもしれない(情報漏洩には両国の国内法に基づいた罰則規定がある)。一般論として言えば、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射する場合、発射地点に近い韓国側では、 発射前の人や車両の動きのほか、発射直後のブースト段階での軌道やエンジン燃焼状況などにつき、より正確なデータを得ることができる。他方、着弾地点に近い日本側では、終末段階の軌道や最終的な飛翔距離につき、より正確な観測が可能だ。これらに米国の早期警戒衛星や電波・通信傍受な どから得られる情報を総合的に組み合わせることで、北朝鮮の軍事活動に関する多角的な分析が可 能となってきたのである。

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最終更新:8/26(月) 11:40
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