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通知表の「所見」欄や家庭訪問を無くしたある中学校の挑戦―負担減のカギはPTA改革

8/26(月) 16:45配信

まいどなニュース

 教員の多忙化やPTAの過剰な負担が問題になる中、今年、神戸市内のある中学校で、通知表の「所見」欄への記入を取りやめました。この中学校では、毎年4月に行っていた家庭訪問も2、3年生は希望者のみとなり、教員も保護者も大幅な負担減に。とかく慣例が重視されがちな学校という組織にあって、改革のカギは「PTAと学校側との連携」でした。

【写真】通知表の所見欄への記入を取りやめることを伝えるメールと手紙

 その学校は、神戸市垂水区にある市立桃山台中学校。住宅街にあり、生徒数500人ほどの中規模校です。教員の働き方改革が求められ、同校でも自動採点システムを導入するなど業務量削減を図ってきましたが、その中で教員らに聞き取りをして浮かんできたのが、通知表にある「学習及び生活についての所見」欄の問題でした。

 これまでは成績以外の生活面を中心に手書きで記入してきましたが、本年度から道徳が教科として評価対象に。文部科学省によると「生徒一人ひとりの成長に着目し、よい点や可能性、進歩の状況を積極的に受け止め、励ますこと」に留意し、自分と違う立場や考え方の理解や多角的な見方といった点を評価する―となっており、「所見と内容が重なってしまう部分が多々あった」(福本校長)といいます。

 実際、別の中学の教員は「昔は注意すべきこと、直して欲しいことを書き込んでいたが、今は否定的なことを書くと怒る保護者も少なくない」とも。「結果、所見欄には良い面だけを書くようになり、いわば『ほめ殺し』状態。道徳の評価もスタンスは同じなので、最後に所見を書く時には、内容を必死でひねり出しているのが実情」と打ち明けます。

 そこで、桃山台中学校では今年5月にPTA運営委員会で意見を聞くことに。特に異論もなかったため、手紙とメールで周知した上で1学期の通知表には「今年度より文章表記はありません」と記して配りました。教員からは「通知表の作成にかかる時間が大幅に減った」との声が上がり、保護者からの苦情や問い合わせは特になかったといいます。

 福本校長は以前勤務していた市立本多聞中学校で、PTA広報誌などを無くす代わりに、教師と「ガチンコ」で意見交換できる場を設けるなど改革を推し進め、「PTAのトリセツ~保護者と校長の奮闘記」(世論社)を保護者の今関明子さんと共著で出版。その画期的な手法を、各地の講演会などで紹介しています。

 桃山台中学校でも、毎年4月に行ってきた家庭訪問を今年から1年生のみにし、2・3年生は希望者だけ行うことにしました。その際も検討段階でPTA側に「正直、無くしたらどう思いますか」と率直に打診。保護者からは「仕事を休めない」「片付けやお茶出しなど気を遣う」など廃止に賛成意見が出る一方、「入学直後の1年生は直接話す機会が欲しい」「希望者もいる」との意見があり、これを取り入れて実施したといいます。

 「家庭訪問が始まったのは半世紀以上も前。当時は電話がない家もあり、何かあれば先生が家に行って伝えなければならなかったが、今は違う」と福本校長。「『生徒の家庭環境や生活環境を知る』という理由もあるが、実際は玄関先だけで、そもそもプライバシーに踏み込むべきでない、という時代。すぐ懇談もあり、意義は薄れている」と指摘します。学校運営の面でも、授業内容が増え、時間数確保に躍起になる中、家庭訪問期間中は4~5日短縮授業をしなければならず、教員の負担も大きかったといいます。

 こうした改革に対し、ある保護者は「通知表の所見はたった一言だし、正直見てませんでした。むしろ懇談で直接話した方が詳しく分かる。家庭訪問も、学年が始まってすぐ『心配なことは』と言われても正直困るし、負担の方が大きかった。本当に助かる」と話します。

 「学校内だけの工夫で残業時間を削るのはもう限界に近い。保護者と腹を割って話し合い、お互いが負担に思っているものを知れば、無理だと思っていたことも変えられる可能性がある」と福本校長。PTA改革は、究極の教員の働き方改革につながるのかもしれません。

(まいどなニュース・広畑 千春)

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最終更新:8/26(月) 17:45
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