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キングダムのキャラから学ぶ「仕事の進め方」

8/28(水) 8:31配信

マイナビニュース

キングダムのキャラから学ぶ「仕事の進め方」

累計発行部数4,000万部超を売り上げ、ビジネスパーソンにも人気の「キングダム」。中国全土を統一した、のちの始皇帝となる秦王「政」の乱世の時代を描いた、今やもっとも熱い歴史漫画の1つである。人気の秘密は、ヒューマンドラマという魅力だけではない。武将たちが戦略を立て、部下をモチベートして統率し、武功を上げ、キャリアを積んでいくーーまさにビジネスの世界に通じるところがあるからだ。

【図表】レーダーチャートでキングダムの主要キャラを比較

先ごろ、人材マネジメントに精通している雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんが「マネジメント理論で読み解く『キングダム勇者の生き様』」というセミナーを開催。汎用性の高い3つのマネジメント理論をもとに、それに合致するキングダムのエピソードを交えて「キャリア成功の法則」を解説した。

本稿では、同セミナーの肝となった、キングダムのキャラに共通する「仕事で成功するための重要な要素」について紹介したい。

8つの「譲れないこだわり」=キャリアアンカー

最初に海老原さんが解説したのは、SPIなどの適性検査が何を測定し、それが仕事(業績)にどのくらいの影響を及ぼすのかということ。

検査から導き出された数値で、例えば「価値観」は立場や時代によって変容し、「資質(性格特性や基礎能力)」は業績妥当性が相関係数値0.4(業績説明要因としては16%!)しかなく、残りの84%の知識や経験などで埋めることができるといわれている。それゆえ、価値観や資質は業績への影響が少ないので、企業側も重視しないところが多いようだ。

その中で、本人の奥深いところ(深層)にある「動因」は不変的で、仕事(業績)への影響が大きいと言う。

海老原さん「動因というのは、『こだわりや心揺さぶられるもの』のことで、人間には28個あるといわれています。上司が『これならやる気になるだろう』と思って部下に与えた仕事も、いっこうに部下のやる気が上がらないのは、上司と部下で心を揺さぶられる動因が異なるからです」。

しかし、動因の中には、仕事場面以外のこだわりも多く、部下のモチベーション向上には「使いづらい」そうだ。そこで、仕事に限定した「こだわり」をまとめたのが、組織心理学者のエドガー・シャインが提唱した8つの「キャリアアンカー」だ。

個人がキャリアを選択するときに、誰にでも、自分にとって譲れないこだわりがあり、それを「船のいかり」にたとえ「キャリアアンカー」と呼ばれている。海老原さんによると、このキャリアアンカーは、20代後半に固まって、70代までほぼ変わらないそう。

ちなみに、8つのキャリアアンカーとは、「経営者志向」「起業・創造」「競争・挑戦」「自立・独立」「スペシャリティ追求」「社会奉仕」「保障・安定」「ワークライフバランス(WLB)」を指す。

このうち、どの要素が強いかによって、例えば、出世欲が高い人、腕を磨くことに重きを置く人などのように、仕事へのこだわりがそれぞれ変わると言う。

王騎と王翦の違いは?

王騎・信・王賁・桓騎・蒙恬・王翦・ヒョウ公・蒙ゴウ・蒙武、キングダムに登場する主要キャラをキャリアアンカーのレーダーチャートで比較すると、その違いがよく分かる。


たとえば、作品中「最強武将」と言われている王騎と王翦の2人を比較してみると……

海老原さん「王騎は『スペシャリティ(腕の確かさ)志向』が王翦よりも上ですが、『起業・創造』や『経営者』には興味がなく、非常に弱い。ただ、下支え役になっても、贏政(秦国の王)と社会を変えること(天下統一)に興味があり『社会奉仕』は強い。一方、王翦は自分の国を持ちたい野望があり、戦略に長けたアイデアマンなので、『経営者志向』と『起業・創造』が非常に強い。同じ武将でも、こんな違いが出てきます」。

また、蒙ゴウと蒙武は親子(蒙恬の祖父と実父)なのに、キャリアアンカーは全く異なるとも言う。

海老原さん「蒙武は『競争・挑戦』『スペシャリティ志向』が強いが、蒙ゴウは弱く、蒙ゴウが強い『保障・安定』『ワークライフバランス』は、蒙武は弱い。親子で、正反対のキャリアアンカーです」。

さらに、「こうした正反対のキャリアアンカーを持つ2人に育てられたからこそ、蒙恬は、両者の強い部分を引き継ぎ、誰とでも仲良くできる才を身に付けたと考えられる」という、蒙恬に対する考察にも非常に納得できるものがあった。

個人的に面白かったのは、「信のナレハテがヒョウ公」という海老原さんの分析。

海老原さん「この2人のキャリアアンカーは、ほぼ同じ形です。王翦のように自分で国を興すという気はないが、『競争・挑戦』が異常に強くて、『スペシャリティ志向』も強い。唯一違うのは『社会奉仕』(社会性)です。ヒョウ公は、一兵卒なんて捨て駒だから死んでも仕方がないという考え方ですが、信は自分たちのために戦って死んだ戦友(兵士)のことを常に考えている。その想いがあるからこそ、強くなっていくことができます」。

キングダムのキャラは自分流に戦い(仕事)をアレンジ

このように、武将たちはそれぞれ異なるキャリアアンカーを持っている。それも、1つのキャリアアンカー(譲れないこだわり)だけではないのが特徴だと言う。

海老原さん「複数のキャリアアンカーを持っているので、戦闘という同じ『仕事』をしているにもかかわらず、その戦い方はキャラによってまったく異なるものになっています。ここから学べるのは、『仕事は自分流に変えられる』ということです。それがキャリアを楽しむ最高の秘訣なのです」。

これは面白い! シャインのキャリアアンカー理論では、「自分のキャリアアンカーに合った仕事を選びなさい」というアドバイスが一般的だが、それだと自分に合わない仕事を選んでしまったら、いつまでも転職を繰り返さなければならなくなる。「それでは、あまりに他力本願すぎる」と海老原さんは指摘する。

しかし、「仕事は自分流に変えられる」と解釈すると、自分次第で人生を面白くも、楽しくもできるのだ。実現するのは大変だが、ポジティブに人生と関われるなら、挑戦しがいもあるのではないだろうか。

海老原さん「日本の雇用体系は、海外に多い『仕事に対して人が割り当てられるジョブ型雇用』ではないので、タスクもガチガチに決まっておらず、いくらでも自分流にアレンジできる。そうすれば、もっと会社も仕事も楽しくなります」。

王賁だけが楽しく働けていない

ただ、紹介された9つのキャラの中で、唯一自分らしい仕事(戦い)ができていない武将がいると言う。

海老原さん「常にストイックに戦いを挑む王賁は、唯一、仕事を楽しめていない。なぜ、そう思うのか? それは、信や蒙恬は『どういう武将?』と聞かれたら、『猛将』『智将』と言えますが、王賁を形容するピッタリな言葉が見つからないからです」。

仕事を自分流に変えられない人は、第三者から見るとパンチに欠け、魅力を感じられない。王賁は王家の血筋で家柄も良く、しかもイケメンなのに人気が無いのは、そこに理由があるそうだ。

海老原さん「王賁が父・王翦から冷遇されているのも、『仕事を自分らしく変えて、もっと楽しめ!』と、気付かせようとしているからです」。


マネジメント理論からみる、キングダムの武将たちのキャラ考察はとても興味深かった。キャリアアンカー理論を初めて知った読者にも、理解しやすかったのでは?

今一度、仕事への向き合い方を考える良い機会となるだろう。


取材協力:海老原嗣生(えびはら・つぐお)

雇用ジャーナリスト、中央大学大学院MBA(人的資源管理)コース客員教授、経済産業研究所コア研究員、人材・経営誌『HRmics』編集長、ニッチモ代表取締役、リクルートキャリア社フェロー(特別研究員)。 大手メーカーを経て、旧・リクルート人材センター入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて人材マネジメント雑誌『Works』編集長に。2008年、人事コンサルティング会社「ニッチモ」を立ち上げる。近著『「AIで仕事がなくなる」論のウソ』(イースト・プレス)のほか『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(小学館文庫)、『女子のキャリア』(ちくまプリマー新書)など著書多数。

西谷忠和

最終更新:8/28(水) 8:31
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