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平均年齢30歳のIT企業に入社した還暦の大工。「1カ月お試し」のつもりが一瞬でなじんだ理由

8/29(木) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

「いや、分かりますよ。私も大工やってたからね」

約20人が働く静かなオフィスに、電話をしている男性の太い声だけが響く。

【全画像をみる】来訪者には社長と勘違いされる、還暦のなべさん

「『私も大工だったから』ってなべさんの口癖なんです。『私もそっち側の人間だから』もよく言ってますね」

ローカルワークスで人事を担当する坂下彩花さん(32)はニヤニヤしながら小声で解説した。

リフォームを希望する消費者と地域の工務店をつなぐサイト「リフォマ」を運営するローカルワークス(東京)。2014年創業、社員21人の平均年齢30歳という若い会社で大工歴30年の「なべさん」こと渡邉一伸さん(60)が働き始めて2年半が経った(ちなみに、なべさんの加入で同社の社員の平均年齢は一気に2歳上がった)。

ひ孫までいるなべさんは、なぜ還暦目前でIT企業の新入社員になったのか。そして見た目通りのアナログななべさんと同僚たちは、どうやって融和しているのだろうか。

「元気な若手」募集に「元気なシニア」が

2017年1月、坂下さんは会社の採用ページから送られてきた応募者の略歴に記載されていた「58歳、大工」という文字を二度見した。

同社はリフォーム会社の経営幹部だった清水勇介さん(43)が、ITを活用して建設業界の情報を透明化し、消費者がリフォームを依頼しやすいプラットフォームを構築しようと設立。2016年に「リフォマ」のサイトを開設し、当時は施工を受けてくれる加盟店を増やすためと営業に力を入れていた時期だった。

社長も40代前半、ほとんどの社員が20~30代前半の会社。坂下さんは「欲しかったのは若い営業スタッフ。小さなベンチャーだし、40代、50代の応募は想定していなかった」というが、「大工」の経歴が気になり、上司に「こういう人、NGですかねえ」と相談した。

相談を受けたCTOの竹本和彰さん(40)は「うちには現場のことが分かる人がいないから、何か勉強になるかもしれない」と、会ってみることにした。

作業服で面接に。いきなりの勘違い

面接当日、作業服を来てオフィスにやってきたなべさんを見て、竹本さんは「予想以上に現場感を漂わせていて、少し驚いた」と振り返る。

そして面接を始めるといきなり、なべさんの勘違いが判明した。

なべさんは高卒後に大工になり、ハウスメーカーの現場監督を経て1997年に独立。人を雇っていたこともあったが、直近は1人親方として仕事をしていた。受注する仕事が少しずつ減る中で、どこからか「これからはネットを活用しないといけない」と聞き、たまたま見つけたのがローカルワークスのサイトだった。

なべさんが「この会社は元請けで、私はインターネット経由で仕事をもらえると思ったの。すごい時代になったなあと必要事項を入力して、送信ボタンを押したら返事があったから、完全に仕事もらうつもりでやってきた」と言うと、坂下さんが「たしかにリフォームを請け負ってくれる加盟店も募集していたんです。でもなべさんは、なぜか求人の方をクリックしたみたいで」と補足した。

勘違いが分かったところで、竹本さんはなべさんから業界の事情をヒアリングすることにした。元々それが目的でもあったからだ。

「私はIT業界の出身ですし、代表の清水はリフォーム業界の経験があるにしろ、経営者目線なんですね。なべさんの話を聞くことで、清水の話を現場の言葉で言い換えるとこうなるのか、とよく理解できました。業界の課題に対する意識も一致していて、なべさんの経験の豊かさも分かりました」(竹本さん)

なべさんも、ローカルワークスの事業内容を聞いて、「これからはITで問題を解決する時代だな」と感心すると同時に、「じゃあ、俺も一肌脱ぐか。時代に乗り遅れたらいけないし、この会社には現場を知ってる人間が必要だ」とやる気が出て来たという。

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最終更新:8/30(金) 0:34
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