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[書評]北朝鮮美術、「宣伝道具」だけではありません

9/3(火) 12:25配信

ハンギョレ新聞

『北朝鮮美術と分断美術』
パク・ゲリ著/アートブックス・2万2000ウォン

 北朝鮮では、キャンバスにどのような絵を描いて、何を美しいと思うのだろうか?韓国のように美術界にも流行があるのだろうか?どのような美術作品が良い作品であるのかに対する、美学的論争も行き交っているのだろうか?「アイスクリーム」と「氷甘味」あるいは「ドーナツ」と「指輪パン」という言葉の違いほど、北朝鮮美術と韓国美術はどう似て、どう異なるのだろうか?

 韓国最高の北朝鮮美術専門家として知られるパク・ゲリ統一教育院教授が出版した『北朝鮮美術と分断美術』は、単に社会主義革命の道具としてだけに使われたような北朝鮮美術が、どのように独自の芸術世界を構築し、政権によりどのような移り変わりを経たのかを見せてくれる。もちろん、北朝鮮社会初期の絵画と彫刻は、徹底的に金日成(キム・イルソン)一家を偶像化するために服務した。金日成の頭上にオーラを与えることで英雄のように描いた「普天堡(ポチョンボ)のたいまつ」や、真剣に国事を論じる金日成・金正日(キム・ジョンイル)父子を描いた「いつも人民のための道に共にされて」などは、露骨な偶像化の事例だ。

 とはいえ北朝鮮の芸術家は、政権の教示によってのみ作品活動を行ったのではない。金日成の銅像を中心に配置して、遊撃隊員の行軍を形象化した「普天堡戦闘勝利記念塔」は、塔のサイズと規模について激しい論争が行われ、建立に反対した者たちは「反革命分子」というレッテルを貼られ除去された。朝鮮時代に四君子を描く時に主に使われた没骨法は、描く対象の形・色感・質感を一回の筆づかいで集約的に表す技法だが、この技法は「封建社会の残滓」であるため、使うべきか止めるべきかについて30年以上の論争を経た。北朝鮮美術には社会主義リアリズムだけがあるのではない。叙情的ながら強烈な色彩で表現された静物画と風景画は、他の西欧美術には見られない独自の美学として目を引く。

 本は分断のトラウマが残した北朝鮮以外の芸術も眺める。脱北民の画家のソンム(線無)が、ポップアートとして完成させた絵画「金正日」と、脱北女性の旅程を扱ったイム・フンスン監督の映画「旅行」などは、世界的な注目を集めた作品だ。国家保安法違反事件をビデオアートに昇華させた「ソウルデカダンス」などは、保安法の矛盾を軽快に皮肉る。本書は絵画、彫刻、ビデオ、ポップアート、パフォーマンスアートまで網羅し、資料的価値が高い。何よりも著者のイデオロギー的偏見のない写実的で淡泊な評論が、さらにその意義を高めている。

 金剛山(クムガンサン)に篭って錦繍江山(クムスガンサン)の美しさを表現する創作にだけ没頭し、指導部に憎まれていたハン・サンイク平壌美術大学教授、朝鮮美女コンテストで1位なしの2位に当選した経歴を持つ留学組出身で、金日成のそばで肖像画を描いたチョン・オンニョなど、北朝鮮画壇を牛耳った芸術家の生涯とラブストーリーも読んで楽しめる。

キム・アリ フリーライター(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

最終更新:9/3(火) 12:25
ハンギョレ新聞

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