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たいして仲良くない友達との会話がつらい……坊主となった辻仁成が答えます 「心を閉ざさず一人で生きる」

9/15(日) 7:00配信

withnews

辻仁成さんがお坊さんとなって10代の悩みに答える「遁走寺の辻坊主」。男子中学生が相談した「友達と無理して合わせるのがつらい」という悩みに、辻坊主が授けた教えとは?

【画像】生きづらさを抱える10代へ直筆メッセージ、樹木希林さんから届いたFAX

今日の駆け込み「友達と無理して合わせるのがつらい」

今日も私はぐうたら、猫の百地三太夫と濡れ縁でごろんと怠けておった。
ここのところ暇で暇でしょうがない。
坊主は儲かると人がいうが、儲からない坊主もおるのじゃ。
でも、なぜか若い子たちがひっきりなしにやってくるので、仕事はないが忙しい。
境内に堂々と踏み入れない子もいて、ご神木の銀杏の高木の背後からこちらの様子を窺っている。

「なんか用か?」
言うと、逃げ出した。
何か相談したいことがあって来たのじゃろうが、ここまでたどり着けない。
よほど度胸のない子なのであろう。
暫くするとまたご神木の陰から顔を出して、こっちを見ておる。
訴えるような目でわしを見ている。
可哀そうになったので、こっちへ来い、と手招きした。
すぐに来たわけじゃないが、十分くらい悩んだ挙句、そろりそろりと近づいてきた。
にゃあ、と三太夫が鳴いた。今日も悩みを解決辻坊主、と言ったのだが、猫語が分からないその子には猫の鳴き声にしか聞こえない。

「どうした」
わしが告げると、少年は、祥吾といいます。そこの中学の2年生です、と言った。
「祥吾、こんにちは。わしが辻坊主だ。で、相談ごとはなんじゃね」
少年は三太夫を長いことじっと見つめておった。
三太夫が痺れを切らせて、にゃあ、と一声吐き出した。ご名答、ぐずぐずするな、と言ったのである。
「あの、ぼく、友達はいるけど大して仲良くないんです。本当は一人でいたいけど、無理して合わせてるんです。辻坊主、ぼくの居場所はどこですか?」
ふむ、わしは帽子をとって頭をかいた。
「あのな、じゃあ、無理してるのなら無理をやめたらいい。無理は心の毒じゃ」
「でも、無理しなきゃ、学校に居場所がなくなるんですよ」
「一生、無理をして生きていくつもりか?」
「え? でも……」
祥吾の眉根がぎゅっとにじり寄った。
「ずっと無理して、どこに辿り着くつもりだ。そこはお前が望む場所か?」
「でも、社会ってそういう世界ですよね?」
「そういう世界もあるだろうが、そうじゃない世界もいっぱいある。最初から祥吾は妥協しているし、無理し過ぎてる。友達を無理して作ろうとするから苦しくなる」
「でも、和尚」
「辻坊主でいい」
「にゃあ」
三太夫が、この人は和尚というほど立派な人じゃない、と偉そうに言った。
余計なお世話である。

「辻坊主、でも、学校という場所は無理してみんなの輪の中にいないとはじき出されてしまうようなところじゃないですか」
「君は一人が好きなんだろ? ずっと一人でいればいい。何を無理している」
「でも、……」
祥吾は黙ってしまった。
「そもそも、友達はいるけど大して仲良くない、という言い方が気に入らん。友達に失礼じゃ。向こうはどう思ってるんだ? 友達を鋳型にはめて見てるな、おぬしは」
濡れ縁から三太夫が飛び降りて、祥吾の足元をぐるぐると回った。
みゃあ、みゃあ。
「人間は無理をしないと生きていけない哀れな生き物だ」
わしは思わず噴き出してしまった。
「辻坊主、何がおかしいんですか? 人が一生懸命相談しているというのに」
「すまん。三太夫が、人間を哀れんだので、おかしくなった。猫は人間みたいに無理はしないから気楽でよい、と言うとる」
祥吾が三太夫を見下ろした。
わしも濡れ縁から降り、祥吾の前まで行った。

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最終更新:9/15(日) 7:00
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